IMS 対応エンタープライズ・サーバーの設定

この章では、IMS 対応エンタープライズ・サーバーの作成方法と設定方法について説明します。

概要

エンタープライズ・サーバーで IMS アプリケーションを実行する場合、この目的に特化した新しいエンタープライズ・サーバーを作成するか、既存のエンタープライズ・サーバーを使用できます。新しいエンタープライズ・サーバーを作成する場合、[Add Server] ダイアログの最初のページで [Micro Focus Enterprise Server with Mainframe Subsystem Support] を選択する必要があります。この操作方法については、エンタープライズ・サーバーに対する IMS の有効化を参照してください。

新しいエンタープライズ・サーバーを作成するか、既存のサーバーを変更すると、そのサーバーを IMS 用に設定できます。使用する IMS アプリケーションに応じて、次のような各種設定操作を実行する必要があります。

これらの操作については、以降のセクションで説明します。

リソース、SIT、およびスタートアップ・リストはすべて、CICS の概念です。これは、エンタープライズ・サーバーでの IMS のサポートが、CICS のサポートと綿密に統合されているためです。その結果、エンタープライズ・サーバーでの CICS アプリケーションの実行に必要な設定の多くが、IMS アプリケーションの実行にも必要になります。CICS の概念の簡単な概要を含む、IMS サポートと CICS サポートとの関係の詳細については、MSS および CICS のサポートを参照してください。

この章で説明する一部の手順では、Enterprise Server Administration を使用する必要があります。このツールの概要については、使用するエンタープライズ・サーバーの『構成と管理』Enterprise Server Administration の概要の章を参照してください。

MSS および CICS のサポート

このセクションでは、IMS との使用目的でエンタープライズ・サーバーを設定するために精通しておく必要がある CICS の概念の概要について簡単に説明します。これは、エンタープライズ・サーバーでの IMS のサポートが、CICS のサポートに統合されているためです。基本的な CICS の概念に精通している場合、このセクションを省略できます。

CICS では、アプリケーションで使用するソフトウェアやハードウェアの項目をリソースと言います。Mainframe Subsystem Support は、リソースを定義、制御、および監視するためのエンタープライズ・サーバーの機能を追加します。これらの機能は、IMS アプリケーションで必要なリソースを含めるように拡張されました。これらの機能に関する CICS の使用経験は必要ありませんが、構造についての基本的な理解が必要です。そのため、CICS モデルに馴染みのない読者にとっては、ここで概要をすばやく説明します。

CICS でリソースのセットを定義します。このようなリソースのセットをリソース・グループと言います。

CICS リージョンは、CICS アプリケーションを実行するための環境です。リージョンを作成する場合、リージョン設定の詳細が提供されるシステム初期化テーブル (SIT) を指定します。SIT で指定される 1 つの項目をスタートアップ・リストを言います。これは、リージョンが起動すると自動的に使用可能になるリソース・グループのリストです。

Windows または UNIX 用のエンタープライズ・サーバーでは、エンタープライズ・サーバーは CICS リージョンと同じです。IMS アプリケーションを実行するには、メッセージ処理リージョン (MPR) と呼ばれる特殊なサービス実行プロセス (SEP) を定義する必要があります。これらの MPR を CICS スタイルのリソースとして定義します。リソースは常にリソース・グループに属しているため、リソース・グループも定義する必要があります。リソース・グループはスタートアップ・リストで参照され、スタートアップ・リストはシステム初期化テーブル (SIT) で参照される必要があります。次に、エンタープライズ・サーバーがこの SIT を使用するように指定する必要があります。

図 17-1 に、SIT、スタートアップ・リスト、リソース・グループ、および各リソースの階層構造を示します。図の下部には、さらに異なるタイプの CICS リソースとして、プログラム制御テーブル (PCT)、ファイル制御テーブル (FCT)、およびプログラム処理テーブル (PPT) が示されています。

CICS リソースの構造

図 17-1:CICS リソースの構造

MSS 内の CICS サポートの詳細については、本書の第 2 部を参照してください。エンタープライズ・サーバーの詳細については、使用するエンタープライズ・サーバーの構成と管理を参照してください。

IMS 固有のリソース定義の追加

IMS サポートには、2 つの新しいトランザクション /CIC および /IMS があります。この 2 つを使用して、エンタープライズ・サーバーを CICS モードと IMS モードにそれぞれ切り替えます。これらの新しいトランザクションを使用可能にするには、caspcupg コマンドを使用してリソース定義ファイルを更新する必要があります。

リソース定義ファイルを更新するには、次のコマンドを入力します。

caspcupg /dp=resourcedefinitionpath /o

resourcedefinitionpath は、更新するシステム・リソース定義ファイルのパスです。デフォルトのシステム・リソース定義ファイル ($COBDIR/etc/cas/dfhdrdat) を使用する場合、/dp=resourcedefinitionpath を省略できます。caspcupg ユーティリティーの詳細については、caspcupg を参照してください。

このようにリソース定義ファイルを /CIC および /IMS トランザクションで更新する操作は、一括プロセスです。caspcupg を使用してリソース定義ファイルをアップグレードすると、更新されたリソース定義ファイルを使用するエンタープライズ・サーバーは新しいトランザクションを使用できます。

エンタープライズ・サーバーに対する MSS の有効化

IMS サポートは Mainframe Subsystem Support (MSS) の一部であるため、IMS に対してエンタープライズ・サーバーを有効にするには、MSS に対してサーバーを有効にしておく必要があります。

操作方法

注:MSS に対してエンタープライズ・サーバーを有効にする場合、IMS アプリケーションに CICS が含まれなければ CICS 検索パスの設定を指定する必要はありません。アプリケーションに CICS が含まれる場合の詳細については、CICS 対応エンタープライズ・サーバーの設定およびCICS 対応エンタープライズ・サーバーの管理の章を参照してください。

エンタープライズ・サーバーに対する IMS の有効化

エンタープライズ・サーバーに対して MSS を有効にすると、そのサーバーに対して IMS を有効にすることができます。

操作方法

注:

情報ファイルの場所の指定

エンタープライズ・サーバーに対して IMS を有効にしたら、エンタープライズ・サーバーが IMS アプリケーションに必要な IMS 関連ファイルを検索するディレクトリーを指定する必要があります。

操作方法

リソース・グループへの IMS リソースの指定

エンタープライズ・サーバーで IMS アプリケーションを実行する前に、次のリソースがリソース・グループに含まれていることを確認します。

これらのリソースを既存のリソース・グループに追加するか、リソース用の新しいリソース・グループを作成できます。

操作方法

エンタープライズ・サーバーのリソース・グループを更新するには、最初にエンタープライズ・サーバーを起動してから Enterprise Server Monitor and Control (ESMAC) を使用してください。Enterprise Server Monitor and Control の詳細については、使用するエンタープライズ・サーバーの『構成と管理』ESMAC 使用によるサーバの管理の章を参照してください。

リソース・グループへのトランザクションの追加

リソース・グループにトランザクションを追加するには、PCT を追加します。

操作方法

リソース・グループへのメッセージ処理リージョンの追加

IMS アプリケーションの実行に使用されるすべてのエンタープライズ・サーバーには、1 つ以上のメッセージ処理リージョンが必要です。リソース・グループにメッセージ処理リージョンを追加することで、エンタープライズ・サーバーを起動するたびにメッセージ処理リージョンが起動されます。

操作方法

スタートアップ・リストへのリソース・グループの追加

IMS アプリケーションで必要なリソースのリソース・グループを作成したら、スタートアップ・リストにそのリソース・グループを追加する必要があります。

操作方法

エンタープライズ・サーバーに対する JCL の有効化

IMS アプリケーションに JCL が含まれる場合、JCL に対するエンタープライズ・サーバーの設定の章の説明に従い、エンタープライズ・サーバーを設定する必要があります。

トランザクションの定義

通常、トランザクション定義は、実行するプログラムのために存在しなくてはいけません。トランザクション定義を作成するには、次の 2 つの方法があります。

この 2 つの方法については、次のセクションで説明します。

手動によるトランザクションの定義

トランザクションは、実行する前に定義する必要があります。

操作方法

トランザクションのインポート

トランザクションのインポート機能を使用すると、メインフレームからダウンロードされた IMS のステージ 1 ファイルから IMS トランザクションを抽出して、そのトランザクションを IMS プロジェクトに自動で追加できます。トランザクションのインポートは次の 2 つのステップによるプロセスです。

  1. ステージ 1 ファイルが読み取られ、すべてのトランザクション定義がトランザクション・ファイルと呼ばれる別のファイルに抽出されます。ステージ 1 ファイルには DLI プログラムのトランザクション定義は含まれません。これらは IMS リージョン外で実行されるバッチ・プログラムであるためです。

    ステージ 1 ファイルからトランザクション・ファイルを作成するには、次のコマンドを入力します。

    mfims stage1ext stage1file transactionfile

    補足説明:

    stage1fileメインフレームからダウンロードされたステージ 1 ファイルです。
    transactionfile後でエンタープライズ・サーバーへのインポートに必要なトランザクションとプリンターの定義を含めるために作成されるトランザクション・ファイルです。これはフラットなテキスト・ファイルであるため、このファイルを編集して、エンタープライズ・サーバーでのアプリケーションの実行に不要な定義を削除できます。
  2. 最初のステップのトランザクション・ファイルが読み取られ、トランザクション定義が現在のディレクトリーの IMSGEN2.DAT ファイルに追加されます。

    トランザクション・ファイルからトランザクション定義をインポートするには、Studio Enterprise Edition コマンド・プロンプトから次のコマンドを入力します。

    mfims stage1imp transactionfile [ADDREPL] [DELEXIST]

    補足説明:

    transactionfileステップ 1 で作成されるトランザクション・ファイルです。
    ADDREPL新しいトランザクションを追加して既存のトランザクションを置き換えるように指定します。ADDREPL を指定しない場合、新しいトランザクションは追加されますが、既存のトランザクションは変更されません。
    DELEXISTSIMSGEN2.DAT ファイルの既存のすべてのトランザクション定義を、インポート前に削除するように指定します。

共有メモリー領域の要件の計算

IMS 対応エンタープライズ・サーバーの共有メモリー領域の計算は、Web サービス・エンタープライズ・サーバーの場合と基本的に同じです。詳細については、使用するエンタープライズ・サーバーの『構成と管理』『構成』の章の Enterprise Servers を参照してください。計算には、エンタープライズ・サーバーに同時に接続される 3270 のクライアントごとに 512 バイトも含める必要があります。サービス実行プロセスの合計数にメッセージ処理リージョンを加える必要がある点に注意してください。

また、同じエンタープライズ・サーバーで CICS または JCL アプリケーションを使用する場合、『CICS の MSS 対応エンタープライズ・サーバーの設定』の章の共有メモリー領域と、『JCL の MSS 対応エンタープライズ・サーバーの設定』の章の共有メモリー領域の説明に従って、計算を実行し、IMS 用に計算した数字に該当結果を追加する必要があります。


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