Net Express または Server Express で作成されたアプリケーションのほとんどは、Enterprise Developer でも変更なしで引き続き機能します。ただし、これらの開発システムの間には、Enterprise Developer へのアップグレード時に考慮すべきいくつかの相違点があります。
コンパイルおよびビルドの相違点
Enterprise Developer におけるアプリケーションのコンパイルとビルドには、異なる働き方をする側面がいくつかあります。場合によっては、プロジェクト・プロパティを変更し、以前に使用したコンパイラの指令と設定をいくつか更新する必要があります。
- 出力ファイル・フォーマット
- Enterprise Developer で推奨される実行可能ファイル・フォーマットは、.dll、.so、および .exe です。.int および .gnt ファイル・フォーマットはコンパイラとデバッガでは引き続きサポートされますが、IDE によって直接作成することはできません。
- コンパイラ指令
- ソース・コードを Enterprise Developer にアップグレードすると、16 ビット・システム専用に設計された一部のコンパイラ指令が適切ではなくなっているため、コンパイル時にエラーを生成します。ユーザは、コンパイルする前にコードおよび指令ファイルからそれらのコンパイラ指令を削除する必要があります。
- リンク
- Windows 上の静的ランタイム・システムとシングルスレッド・ランタイム・システムは不要になっており、Enterprise Developer には付属していません。現在、Enterprise Developer でビルドされたアプリケーションは、共有または動的ランタイム・システムにリンクされるようになっています。 UNIX では、シングルスレッドまたはマルチスレッドの共有または動的ランタイム・システムにリンクできます。
- 呼び出されるプログラムと依存性
- 実行時に呼び出されるプログラムは、以前と同じ方法で検索されます。ただし、COBPATH を設定してファイルを共通フォルダにコピーするための新しい方法もいくつかあります。
- ファイル・ハンドラ
- ファイル・ハンドラ .obj ファイルは、Enterprise Developer では使用できません。Enterprise Developer は、代わりに mffh.dll ファイルでパッケージ化されたファイル・ハンドラを使用します。
- Makefile 変換
- 既存の makefile を Enterprise Developer for Eclipse から使用することはできませんが、Enterprise Developer でサポートされているコマンドを呼び出す makefile は以前と同様に機能します。
- SQL コンパイラ指令オプション
- SQL アプリケーションを Enterprise Developer にアップグレードする場合、一部のアプリケーションはコンパイラ・エラーを回避するために追加の SQL コンパイラ指令オプションを必要とする可能性があります。
- XML PARSE 文
- Net Express では、XMLPARSE コンパイラ指令のデフォルト設定は COMPAT です。COMPAT を使用すると、XML PARSE 文は IBM Enterprise COBOL Version 3 の情報とイベントを返します。Enterprise Developer では、デフォルトは XMLPARSE(XMLSS) です。XMLPARSE(XMLSS) は、IBM Enterprise COBOL Version 4 の情報とイベントを返します。
ランタイム・システムの相違点
Enterprise Developer に付属しているランタイム・システムと Net Express、Mainframe Express、および Server Express に付属しているランタイム・システムにはいくつかの相違点があります。ただし、Enterprise Developer で既存のアプリケーションをソース・コードから再コンパイルすれば、これらの相違点は既存のアプリケーションには影響しません。
- OpenESQL
- Enterprise Developer は、最適なパフォーマンスを実現するために BEHAVIOR SQL コンパイラ指令オプションをデフォルトで MAINFRAME に設定します。Net Express で示されたデフォルト動作に戻るには、BEHAVIOR 指令を UNOPTIMIZED に設定します。
- シングルスレッド・ランタイム・システム
- シングルスレッド・ランタイム・システムは、Windows 上の Enterprise Developer では使用できません。代わりに、シングルスレッド・アプリケーションとマルチスレッド・アプリケーションは、どちらもマルチスレッド・ランタイム・システムを使用して実行されます。これは、既存のアプリケーションには影響しません。
- 静的リンク・ランタイム・システム
- 静的リンク・ランタイム・システムは、Enterprise Developer では使用できません。代わりに、ユーザはネイティブ・コードを共有または動的ランタイム・システムにリンクします。これは、既存のアプリケーションには影響しません。
- Enterprise Developer と旧 Micro Focus 製品の共存
- 同じマシンにインストールされた Enterprise Developer と Studio Enterprise Edition が正しく機能することを保証するには、追加の構成がいくつか必要です。
制限事項とサポートされていない機能
旧 Micro Focus 製品の一部の機能は Enterprise Developer では利用できません。ただし、これらの機能の多くには代替手法が用意されています。
- Java および Web サービスとしての COBOL サービス
- Net Express または Server Express の Interface Mapping Toolkit で作成された COBOL サービス (Java インターフェースや Web サービスなど) は、Micro Focus Server 内のエンタープライ
・サーバのもとでのみ動作します。これらの COBOL サービスは、エンタープライズ・サーバのもとでは動作しません。
- CSBIND
- CSBIND は、クライアント/サーバ COBOL アプリケーションをサポートする Net Express、Server Express、および Application Server のサービス・パッケージです。このサービス・パッケージは、Enterprise Developer では利用できません。
- DBMS プリプロセッサ
- 旧 Micro Focus 製品は、Enterprise Developer ではサポートしていない DBMS プリプロセッサ・バージョンをサポートしていました。現在サポートされている DBMS プリプロセッサのリストについては、『Database Access Support with Native COBOL』のトピックを参照してください。
- Dialog System
- Dialog System アプリケーションは Eclipse ではサポートされていませんが、ユーザはアプリケーションの非 GUI コンポーネントを Eclipse にアップグレードし、Eclipse の GUI ツールを使用して GUI コンポーネントを再作成することができます。
- Enterprise Server
- Enterprise Server および Server for SOA は、COBOL サービスと COBOL アプリケーション・プログラムの実行環境 (CICS、JCL、および IMS のメインフレーム・サポートなど) を提供します。CICS、JCL、IMS は、Enterprise Developer や Enterprise Server では使用できません。
- フォーム・デザイナ
- フォーム・デザイナは、CGI ベースのインターネット・アプリケーションおよびイントラネット・アプリケーションのユーザ・インターフェースを作成するための Net Express ツールです。フォーム・デザイナと HTML ページ・ウィザードは、Enterprise Developer では使用できません。
- FSView
- FSView は、Fileshare サーバを管理するためのユーティリティです。FSView GUI は、Enterprise Developer ではサポートされません。
- ホスト互換性オプション (Host Compatibility Option; HCO)
- Mainframe Express は、ホスト互換性オプション (HCO) 機能のユーザ・インターフェースを提供していました。このユーザ・インターフェースは、Enterprise Developer では利用できません。ただし、HCO Create Database、DDL Processor、DCLGEN、Export Data、および Import Data ツールは、バッチ・コマンド・ライン呼び出しによって利用できます。
- Interface Mapping Toolkit
- Enterprise Developer - Team Edition for Eclipse では、インターフェース・マッパ・ユーザ・インターフェースはサポートされません。
- INTLEVEL のサポート
- INTLEVEL 指令は、Enterprise Developer のコンパイラでは拒否されます。
- J2EE アプリケーション・サーバ
- J2EE アプリケーション・サーバは、Enterprise Developer ではサポートされません。
- NSAPI
- Enterprise Developer には、NSAPI のサポートはありません。
- オンライン・ヘルプ・システム
- Net Express は、文字ベースのアプリケーションからオンライン・ヘルプを作成してそれを画面に表示するためのオンライン・ヘルプ・システムを備えていました。このオンライン・ヘルプ・システムは Enterprise Developer では利用できず、オンライン・ヘルプ・システム情報ファイル・タイプ (.HNF) はサポートされていません
。
- OpenESQL
- Net Express および Studio Enterprise Edition では、OpenESQL における Oracle OCI がサポートされています。Enterprise Developer は、OpenESQL における Oracle OCI をサポートしていません。
- セキュア・ソケット・レイヤ (Secure Sockets Layer; SSL)
- SSL は、暗号化形式で電子通信を送受信するための標準メカニズムです。Enterprise Developer では、SSL は現在サポートされていません。
- SQL Option for DB2
- Mainframe Express および Net Express IDE では、IDE 内のメイン・メニューから SQL Option for DB2 を呼び出すことができました。Enterprise Developer の場合、SQL Option for DB2 は IDE 内のメイン・メニューから利用できません。代わりに、すべての SQL Option for DB2 ツールを [Start > All Programs > Micro Focus Enterprise Developer > Data Tools > SQL Option for DB2] から利用すること
できます。
- TX Series
- Net Express で Websphere と連動するために使用される IBM TX Series 製品は、Enterprise Developer ではサポートされません。
ランタイム技術の相違点
いくつかの技術は Enterprise Developer では動作が異なります。これは、既存のアプリケーションのアップグレード方法に影響する可能性があります。
- COM 相互運用性
- COM オブジェクトの作成を支援するツールは、Enterprise Developer には付属していません。ただし、COM ランタイム・コンポーネントが付属しているため、COM はサポートされており、アプリケーションは既存の COM オブジェクトと相互運用できます。
- ファイル処理
- 独自のセキュリティ・モジュールを Fileshare に組み込む方法は変更されています。また、Enterprise Developer と Net Express では FILEMAXSIZE 設定が異なります。
- Java と COBOL
- cobsje スクリプトは、UNIX 上の Enterprise Developer for Eclipse では使用できません。Enterprise Developer は、COBOL ランタイム・システムを使用し、LIBPATH、LD_LIBRARY_PATH、SHLIB_PATH、JAVA_HOME などに基づいて JVM をロードします。
- テスト・カバレッジ
- Enterprise Developer は、コマンド・ラインからのテスト・カバレッジのみサポートしています。
編集およびデバッグの相違点
Net Express、Mainframe Express、および Server Express の編集/デバッグ機能の多くは Enterprise Developer でも利用できますが、それらの機能の中には名前が異なる
のや動作が若干異なるものがあります。また、バックグランド解析などの新しい機能もいくつかあります。
- プログラム・ブレーク・ポイント
- プログラム・ブレーク・ポイントは、指定したプログラムまたはそのプログラム内のエントリ・ポイントが呼び出されるたびに実行を停止するブレーク・ポイントです。これらのブレーク・ポイントは、Enterprise Developer ではサポートされています。
- リモート・デバッグ
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プログラムのリモート・デバッグに使用される Net Express animserv ユーティリティは、Enterprise Developer では cobdebugremote (64 ビットのプロセスをデバッグする場合は cobdebugremote64) に置き換えられています。
- ソース・プール・ビュー
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Net Express のソース・プール・ビューは、現在のビルド・タイプでソース・ファイルが使用されるかどうかに関係なく、プロジェクト・ディレクトリ内のソース・ファイルをすべて表示していました。このビューは、Enterprise Developer では利用できません。