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第 4 章 Net Expressによる開発サンプルセッション

Micro Focus Net Express 3.0J が標準装備する UNIX Option という機能を用いることによって、COBOLアプリケーションの開発、テスト、デバッグを行い、完成されたアプリケーションをネットワークを経由してファイル転送し、UNIX上で再コンパイルするという作業を、一貫して Windows GUI環境下で行うことができます。

このサンプルセッションでは、Windows上で Net Expressを使用して、Server Expressのアプリケーションをクロス開発する方法に親しむことができます。簡単な画面入出力を使用した索引ファイルのメンテナンスプログラムを例題として使用します。

4.1 サンプルセッションを実行するための条件

このサンプルセッションを実行するためには、以下の前提が必要です:

  1. UNIXサーバーに Server Express が正しくインストールされている

  2. 開発者の使用する Windows PC に Net Express 3.0J が、UNIX Optionのコンポーネントを含めて正しくインストールされている

  3. 開発者の使用する Windows PC は、UNIXサーバーへのTCP-IP接続ができている

  4. 開発者は、UNIXサーバーのユーザアカウントを持っており、ホームディレクトリが割り当てられている

4.2 Net Express パブリッシャのための準備

UNIXオプションは、Net Expressで新規開発されたアプリケーションをターゲットのUNIX機へ転送してビルドする 「パブリッシュ」機能を提供しています。

UNIXオプションは UNIXリモートシェル (RSH)プロトコルを使用して、アプリケーションをPCからUNIXへパブリッシュします。ほとんどすべての UNIXシステムは、デフォルトで RSHサーバープログラムの使用が可能です。

4.2.1 SCPのインストール

パブリッシャがリモートシェルを使用して UNIX側と通信するために、UNIX上に SCPと呼ばれるプログラムをインストールしておく必要があります。以下の手順に従ってください。

  1. SCP プログラム (scp と呼ばれます) のバージョンを選択します。使用しているオペレーティングシステムに適したプログラムを Server Express の製品CD の \UNIXO\SCP ディレクトリから選択し、UNIX システム上の一時領域にバイナリでファイル転送します。たとえば、/tmp です。

  2. UNIX システムに root としてログインします。

  3. /usr/local/bin ディレクトリが存在することを確認します。このディレクトリが存在しない場合には、作成します。
      mkdir /usr/local/bin
             
  4. 誰もが読込み可能なようにします。

    chmod 755 /usr/local/bin

  5. scp を一時領域から /usr/local/bin へコピーし、すべてのユーザが scp を実行できるようにします。

    例:
   cp /tmp/scp /usr/local/bin/scp ; chmod 755 /usr/local/bin/scp

4.2.2 RSHユーザの登録

/etc/hosts.equiv ファイルに、マシン名 ユーザID のエントリを、以下の例のように追加します。

ws1 usr1

このファイルが存在しない場合は、テキストファイルとして新規作成してください。また、各ユーザのホームディレクトリ下の .rhosts ファイルにも、該当するユーザの使用するPCに関する、マシン名 ユーザID のエントリを追加します。

4.2.3 .mfenv の設定

パブリッシュ中の環境に対して、変数の変更または追加指定を行うには、ファイル、.mfenv に環境変数を記述します。ここでは、COBOLシステムのシェアドオブジェクトの探索パスを LD_LIBRARY_PATH環境変数(Solarisの場合)、SHLIB_PATH(HP-UXの場合)に指定します。以下に例を示します。

LD_LIBRARY_PATH=/opt/lib/cobol/lib
export LD_LIBRARY_PATH
         

4.3 Net Express IDEでのプログラムのデバッグ

Net Express では IDE というGUI環境の中でほとんどすべての開発作業を行うことができます。

IDE は統合化されたデスクトップシェルによって、編集・コンパイル・デバッグなどのプログラム開発のあらゆる工程をプロジェクト単位で支援します。開発プロジェクトを構成するすべてのオブジェクト(ソースファイル、データファイル、ドキュメント)を一元管理し、ツールの選択起動を簡単なマウス操作で行えます。

4.3.1 Net Express プロジェクトの作成

IDEを使うためには、プロジェクトを作成する必要があります。以下に、そのための準備作業を説明します。

  1. Windowsのスタートメニューから Net Express を起動します。

  2. まず作成するアプリケーションを管理するプロジェクト作成します。[ファイル]−[新規作成]−[プロジェクト] を選択して、【OK】をクリックします。

  3. 〔プロジェクトの新規作成〕ダイアログボックスが開きます。〈作成したいプロジェクトのタイプ〉で、省略時の「空プロジェクト」 を選択します。

  4. 〈プロジェクトの名前〉と〈プロジェクトのフォルダ〉を指定します。「プロジェクトの名前」は、作成するプロジェクトグループを示すもので、例えば、「顧客管理システム」 などを指定します。「プロジェクトのフォルダ」は、プロジェクトのソースファイルやオブジェクトコードなどが格納されるディレクトリで、事前に作成しておきます。

    以上でプロジェクトが作成されました。次にソースファイルをプロジェクトに追加します。

  5. プロジェクトに追加するソースファイルを、プロジェクトのディレクトリにコピーします。このときに、適切な拡張子をつける必要があります。COBOLソースファイルは .CBL、COPYメンバーは .CPYなどと決まっています。 このサンプルでは、Server Expressの製品 CD の\UNIXO\DEMO ディレクトリに収録されている以下の2ファイルを使用します。
      CUSTCHAR.cbl
      SCRDEF01.cpy
            
  6. 〔プロジェクト〕ウィンドウの右側の〈ソースプール〉には現在、何も入っていません。ここを右クリックし、[ソースプールへファイルを追加]を選択します。

  7. 表示されたフォルダ内容に選択対象があれば、Ctrl キーとマウスの左ボタンで選択して、【OK】をクリックします。ここでは、CUSTCHAR.cbl を選択します。 COPYファイル、SCRDEF01.cpy は自動的に追加されます。

  8. ソースプールからCOBOLプログラムをプロジェクトツリービューにドラッグし、ビルド構造を作成します。

以上で関連ソースの登録が完了しました。

4.3.2 コンパイル指令設定

Net Express を始めとする Micro Focus の COBOL コンパイラは、100 以上にも及ぶ多種多様なコンパイラ指令を持っています。この指定によってコンパイラの動作をさまざまにカスタマイズすることができます。 コンパイラ指令の指定方法には以下のものがあります:

  1. ソースプログラムの先頭に $SET 文を書いて指定する。

  2. コンパイルのコマンド行で指定する。

  3. IDE の[プロジェクト]−[ビルド設定]でソースメンバー毎に個別に指定する。

  4. IDEの[プロジェクト]−[ビルドタイプ]−[ビルド記述の変更]でビルドタイプ毎の省略時指令を指定する。

  5. IDEの[プロジェクトのプロパティ]で、プロジェクト全体の省略時指令を指定する。

  6. Net Express がインストールされた \bin ディレクトリ下の cobol.dir ファイルに、ユーザ環境全体の省略時指令を指定する。

上記の指定方法は、上のものほど優先度が高い指定となります。

このセッションでは、とくに指令は指定しません。必要な指令の設定は、適宜上記のいずれかの方法で与えることができます。以下に手順の一例を示します。

  1. [プロジェクト]−[プロパティ]で〔プロジェクトのプロパティ〕ダイアログボックスを開きます。

  2. 〈プロジェクト指令〉の現在の設定の末尾、セミコロンの手前に追加の指令を記入します。

  3. 【OK】をクリックします。

4.3.3 リビルド

ツールバー上の[リビルド]ボタンでプロジェクト全体のコンパイルを行えます。

IDEの下部にある出力ウィンドウの〔ビルド〕タブに進捗が表示されます。コンパイルのエラーがあると、ここにエラーメッセージが表示されます。エラーメッセージ行をダブルクリックすると、ソース中の問題個所がエディタで表示されます。

[リビルド]ボタンは、前回リビルドされてから更新されたソースメンバーだけを自動的に選択してコンパイルします。また、COPYメンバーの依存関係も把握しているため、COPYが更新された場合は、そのCOPYに依存するソースメンバーだけを自動的に選択してコンパイルします。

4.3.4 プログラムのアニメート

プロジェクトツリービュー中で、CUSTCHAR.int を右クリックし、[アニメート]を選択します。

確認ダイアログボックスで【はい】をクリックすると、アニメータがスタートし、CUSTCHAR.cblの手続き部の先頭に位置付けられます。この後[ステップ]ボタンをクリックするとプログラムが1ステップずつ実行されます。

このデモプログラムの操作方法は明解です。プログラムを最初に実行したときに、実行ディレクトリの下に CUST.DAT という索引編成ファイルを作成します。以下のメンテナンス画面を使用して、顧客マスターファイルにレコードを追加、更新または削除してみてください。

4.4 Net Express パブリッシャのサーバ設定

UNIX サーバ上に、このプログラムを転送してビルドするためのディレクトリを新規に作成しておきます。このディレクトリには、4.2.2 でリモートシェルに登録したユーザに書き込み権が与えられていなければなりません。

  1. Net Express の[UNIX]−[セットアップ] を選択し、〔サーバー〕タブを選択します。

  2. 【設定】をクリックすると、サーバ名を尋ねられますから、Server Express がインストールされている UNIX サーバのホスト名または IP アドレスを指定します。

  3. 〔サーバー設定〕ダイアログボックスが現れます。

  4. 〈ユーザ ID〉に、UNIX のユーザアカウントを指定します。

  5. 〈UNIX COBOL ディレクトリ〉に、Server Express がインストールされているディレクトリのフルパスを指定します。

  6. 〈ビルドディレクトリ〉に、UNIX上のビルド用ディレクトリのフルパスを指定します。

  7. UNIX サーバのロケールが EUC の場合は、〈EUC サーバー〉チェックボックスを選択します。

  8. 【OK】をクリックして、Net Express IDE に戻ります。

4.5 プログラムの Server Express へのパブリッシュ

  1. Net Express の[UNIX]]−[すべてをパブリッシュ]を選択します。

  2. これで、ソースプログラムが UNIX 上の指定されたディレクトリに転送され、Server Express によるコンパイルまでが自動的に実行されます。

4.6 Server Express でのプログラムの実行

UNIX へログインし、第 3 章で説明されている方法により、Server Express で CUSTCHAR.int をアニメートまたは実行してください。


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