ここでは、AppTrack の実行方法と、AppTrack による AS、またはES ライセンスのインストールおよび管理の方法について説明します。
Enterprise Server または Application Server を使用するアプリケーションを実行する前に、AS、またはES ライセンスがインストールされている必要があります。 これらのライセンスは、ライセンス管理ユーティリティの AppTrack を使用してインストールできます。 この章の『ライセンスのインストールとアンインストール』を参照してください。
インストールするライセンスは、すべてライセンスデータベースに格納されます。 誤用を防止するために、パスワードを設定することをお奨めします。
ライセンス管理ユーティリティの AppTrack を使用して、ライセンスをインストールして管理し、アプリケーションを実行しているユーザ数を監視することができます。
ライセンスの詳細を正しく表示するために、最新バージョンの Enterprise Server または Application Server に付属する AppTrack を使用してください。
警告:AppTrack をシステムで使用するには、UNIX が共有メモリの割り当てと使用をサポートしている必要があります。
許可されていない人物がライセンスシステムを改ざんするのを防ぐため、AppTrack にパスワードを設定することをお奨めします。
インストールしたライセンスはすべてライセンスデータベースに格納されます。ライセンスデータベースは、当該 Application Server のユーザ、または異なる Enterprise Server または Application Server のユーザのいずれかが初めてライセンスをインストールしたときに作成されます。 設定したパスワードは、そのライセンスデータベースにインストールされるので、データベースが生成されるまではパスワードを保存する場所はありません。 ライセンスをインストールし、データベースが生成されると、そのパスワードが保存されます。 ライセンスデータベースからすべてのライセンスを削除しても、パスワードは保存されたままです。 ライセンスデータベースに存在するパスワードは、1 つのみなので注意してください。他の Enterprise Server または Application Server がシステムにインストールされ、他のユーザによって管理されている場合は、その同じパスワードをすべてのユーザ間で共有します。
AppTrack を使用してライセンスを手動でインストールできます。
1 つの AS、またはES ライセンスを複数のマシンに同時にインストールすることはできません。これを行った場合、使用許諾契約条件を破ることになります。AS、またはES ライセンスを 1 つのシステムから他のシステムに移すには、まず現在のシステムからライセンスをアンインストールする必要があります。追加の AS、またはES ライセンスが必要な場合は、サポート窓口または Micro Focus 社が許諾した提供者に、購入の詳細をお問い合わせください。
使用しない古いライセンスは削除したりアンインストールする必要はありません。
64 ビット版の Application Server を AIX にインストールすると、64 ビット版用のライセンスが発行されます。 AIX にインストールされている 32 ビット版の Application Server に関連するライセンスはすべて有効のままですが、 AIX にインストールされた 64 ビット版の Application Server では 32 ビット版ライセンスは使用できません。同様に、AIX にインストールされた 32 ビット版の Application Server で 64 ビット版ライセンスを使用することもできません。
32 ビット版のライセンスは、いつでもインストールおよびアンインストールできます。ただし、これらが存在していても、64 ビット版の Application Server には何の影響もありません。
AS、またはES ライセンスの使用状況を監視することができます。これは、AppTrack でライセンスレポートを表示したり、Enterprise Server のコンソールログを表示して行います。
Enterprise Server ライセンスメッセージがコンソールログに出力され、Enterprise Server Administration コンソールで表示できます。
AppTrack のライセンスレポートには、次の情報が表示されます。
システム状態のライセンスとは、Enterprise Server または Application Server の標準ライセンスが、 使用を開始してから 30 秒の間存在しているもののことです。 ここで重要なのは、標準ライセンスでは、アプリケーションがすぐに 終了しても、そのライセンスは 30 秒が経過するまで解放されないという点です。 アプリケーションが使用を開始してから 30 秒の間は、ライセンスは Sys と In Use の両方のカラムに含まれます。 30 秒が経過すると、Sys カラムからライセンスが削除されますが、アプリケーションが継続して動作していれば In Use カラムにはそのまま残ります。
Developer Usage と表示されるエントリは、アプリケーションを開発する際に使用される開発者用ライセンスを示します。 このライセンスは、開発が完了し運用段階でのアプリケーションの実行には使用できません。詳細については、『開発者用ライセンス』の章を参照してください。
AppTrack で オプション 7 (現在のユーザ) を選択することで、現在 AS ライセンスユニットを使用しているユーザのリストを表示することができます。 また、独立したユーティリティ $COBDIR/aslmf/userstat.gnt を実行し、標準のリダイレクションを使用することで、出力をファイルにリダイレクトすることができます。
このオプションを使用するには、まず、/var/mfaslmf に空のファイル apptrack.log を作成し、ログを有効にする必要があります。 これを行うには、次のように touch コマンドを使用する方法が最も簡単です。
touch /var/mfaslmf/apptrack.log
このファイルには一般的な書き込み許可を付与します。この許可がない場合、現在のユーザが正しく表示されない場合があります。
表示される情報はいくつかのブロックからなり、アクティブな ASLMF $COBDIR ごとに 1 つのブロックが存在します。 各ブロックは $COBDIR 値から始まり、その後にレコードのリストが続きます。その $COBDIR の下に各ユーザジョブのレコードが 1 つずつ示されます。 各レコードの詳細は、次のとおりです。
統計をとるために、一定期間にわたって定期的にライセンスの使用状況のスナップショットを撮り、データ収集の最後に平均ライセンス使用数を計算すると便利です。統計をとるには、次のコマンドを使用します。
$COBDIR/aslmf/apptrack stats p n
パラメータの内容は次のとおりです。
p | 統計データを収集する間隔を秒数で指定します。 |
n | 統計データを収集する回数を指定します。 |
次に例を示します。
$COBDIR/aslmf/apptrack stats 60 10
この例では、60 秒に 1 回の割合で、スナップショットを 10 回撮ります。
デフォルトでは、統計は画面に表示されますが、通常は次の例に示すようにファイルに出力した方が便利です。
$COBDIR/aslmf/apptrack stats 60 10 >> userfile
統計の書式は、AppTrack の「ライセンスの概要」で表示されるものとほとんど同じです。詳細については、『ライセンスの使用状況の監視』を参照してください。異なるのは、見出し行が表示されない点と、各スナップショットが境界線によって区切られている点です。
アプリケーションを実行しようとしたユーザの数が、インストール済みのライセンス数を上回ると、一部のユーザは現在使用できるライセンスユニットがないという応答を受け取ります。この状況が発生する頻度を監視して、追加購入する AS ライセンス数を決定します。
AppTrack では、ライセンスがない状況を監視するために、ライセンスユニットの要求が満たされない場合は常にシェルスクリプト /var/mfaslmf/nolicense が実行されます。それぞれのアプリケーションを個別に識別できるように、Application Server のインストールディレクトリを識別する、1 つのパラメータがスクリプトに渡されます。このスクリプトは、ディレクトリ名と、実行の試みが失敗した日時を /var/mfaslmf/USERLOG ファイルに書き込みます。
提供されているサンプルスクリプト nolicense は必要に応じて変更することができます。たとえば、このスクリプトにはコメント化された行や、スクリプトの呼び出し方法が記述されている行や、特定のユーザにメールを自動送信する方法が記述された行があります。
この監視機能を使用したくない場合は、nolicense スクリプトを無効にすることができます。これを行う方法としては、必要のない行をコメントアウトすることをお奨めします。
AppTrack は、nolicense スクリプトがルートユーザによって所有されていて、Group や Other に対して書き込み許可がない場合のみ、このスクリプトを実行します。 これによって、ライセンス管理に責任を持たない者がスクリプトに書き込みできないようにしています。
全体的なライセンス数は十分であっても、ある瞬間に複数のユーザがアプリケーションを要求すると、ライセンス割り当てを超過することがあります。その場合は、環境変数 ASLMFRETRY の設定をお奨めします。
注:stats コマンドを使用して、一定期間にライセンスを使用したユーザ数を確認できます。詳細については、『統計の収集』の項を参照してください。
ASLMFRETRY を設定すると、アプリケーションがライセンスユニットの取得を試行する回数、および再試行までの待機時間を指定できます。実際は、タスクはライセンスユニットが解放されるまで一時停止の状態になります。
ASLMFRETRY の形式は、次のとおりです。
ASLMFRETRY=retries[,wait]
パラメータの内容は次のとおりです。
retries | タスクがライセンスの取得を試行する回数。 |
wait | ライセンスの取得を再試行するまで待機する秒数。デフォルト値は 10 です。 |
たとえば、ライセンスの使用を 100 回まで試行できるようにする場合は、次のように指定します。
ASLMFRETRY=100 export ASLMFRETRY
ライセンスの使用を 25 回まで試行できるようにし、試行間隔を 1 分に指定する場合は、次のように指定します。
ASLMFRETRY=25,60 export ASLMFRETRY
注:ASLMFRETRY 環境変数を設定すると、未使用のオーバードラフトライセンスユニットがある場合は、それらがすべて使用されるまで、再試行は行われません。オーバードラフト機能の詳細については、『オーバードラフト』の項を参照してください。
同時に複数のアプリケーションのコピーを実行する予定がある場合は、同時実行ユーザ数に対して十分な数のライセンスユニットを確保する必要があります。
たとえば、年末などの特別な時期には、通常より多くのアプリケーションのコピーを同時に実行しなければならない場合があります。この状況に対応できるように、十分な数の AS ライセンスを注文する必要があります。ただし、追加のライセンスを購入するまでの間、予定外の使用の変動に対処できるよう、AppTrack には制限付きのオーバードラフト機能が内臓されています。
AppTrack はライセンスユニットの使用状況を監視し、使用数がライセンスのキャパシティを超えたことを検出すると、/var/mfaslmf ディレクトリにあるファイル overdraft.log にエントリを作成します。
overdraft.log ファイルを毎日チェックし、ライセンスの使用に関するメッセージがないか調べる必要があります。 または、このファイルが更新されるたびにライセンスの管理者にメールが送信されるように、シェルスクリプト nolicense を構成することができます。 ライセンスの使用数がキャパシティを超えた場合、ライセンスの管理者は、製品の供給元にその解決方法を問い合わせる必要があります。 『ライセンスがない場合の特別な処理』を参照してください。
『ライセンスの再試行の自動化』の項で説明したように、ASLMFRETRY 環境変数を設定すると、未使用のオーバードラフトライセンスユニットがある場合は、それらがすべて使用されるまで、再試行は行われません。
実行できる追加のコピーの数は、アプリケーションにインストールされたライセンスユニット数によって次のようになります。
インストール済みのライセンスユニット数 | 使用可能な追加のライセンスユニット数 |
---|---|
1 | 0 |
2 〜 9 | 1 |
10 〜 19 | 2 |
20 〜 29 | 3 |
30 〜 39 | 4 |
新たに 10 個のライセンスユニットをインストールするたびに、追加のライセンスが 1 つ使用可能になります。
この追加のライセンスは、最初に使用されてから 30日間有効となります。
ASLMF ライセンスの使用数が、定義したレベルに達するか上回ったときにユーザスクリプトが起動するように設定すると、ライセンスの追加購入が必要なことを示す警告を表示したり、オーバードラフトの初回の使用時を一部制御することができるので便利です。
デフォルトでは、ライセンスの使用数に関する警告は有効になっていません。
テキストファイル watermark でライセンスの使用数のレベルを指定します。このファイルは、Application Server をインストールした $COBDIR ディレクトリに作成する必要があります。 ライセンスの使用数に関する警告機能は、Application Server のインストール環境ごとに機能するため、環境ごとにオンまたはオフにできます。また、環境ごとに異なる使用レベルを指定することができます。
テキストファイル watermark では、次のどちらかを使用してライセンスの使用数レベルを定義します。
MAX - nnnn
nnnn は自由形式の数値です。
ライセンスの使用数レベルが定義した数に達するか超過すると、AppTrack はユーザスクリプト /var/mfaslmf/watermark を実行し、次のパラメータをスクリプトに渡します
有益なアクション (スクリプトから電子メールで警告を送信するなど) が行われるようにユーザスクリプト /var/mfaslmf/watermark を記述する必要があります。
AppTrack は、watermark スクリプトがルートユーザによって所有されていて、Group や Other に対して書き込み許可がない場合のみ、このスクリプトを実行します。 これによって、ライセンス管理に責任を持たない者がスクリプトに書き込みできないようにしています。
ライセンスの使用数に関する警告は、テキストファイル $COBDIR /WATERMARK が存在する場合に限り有効です。 ライセンスの使用数に関する警告を無効にする場合は、単にライセンスの使用数レベルの値を到達不能な値に変更するのではなく、$COBDIR /WATERMARK を削除する必要があります。 このファイルを削除しないと、AppTrack がそのファイルを開いて内容を解析するので不要な処理時間がかかってしまいます。
AS ライセンスがインストールされているにもかかわらず、ユーザがアプリケーションを実行できない場合は、正しい Application Server に対してライセンスがインストールされているかどうかを確認してください。 AppTrack を起動して、オプション 1 (ライセンスリスト) を選択します。
表示されたライセンスが正しい場合は、Application Server ディレクトリに使用している設定が、正しいアプリケーションの設定に合っているか確認してください。
ライセンスが誤った Application Server にインストールされている場合は、ライセンスをアンインストールし、COBDIR を正しい参照先ディレクトリに設定し、Application Server にライセンスを再インストールします。
正しいディレクトリにインストールしても、引き続きアプリケーションを実行できない場合は、ライセンス管理ユーティリティのオプション 6 (ライセンスの再初期化) を選択してください。この処理を実行しても効果がない場合は、アプリケーションの販売元に連絡し、問題を説明してください。
AppTrack 下でアプリケーションを起動したときに、「環境変数 COBDIR が設定されていないか、または不適切な権限です。」というメッセージが表示された場合は、次の事項を確認してください。
ライセンスメッセージは、次の場合に表示されます。
ライセンスオーバードラフトのログは、Application Server のインストールディレクトリに保存されます。 このファイルは解読不可能ですが、Micro Focus に送って分析してもらうことができます。 このファイルを AppTrack のインターフェイスから削除したり、変更を加えたりすると、アプリケーションの実行ができなくなります。
ライセンスデータベースが削除されたり破損した場合は、aslmdbrecover ユーティリティを使用してデータベースを回復し、ライセンスを再インストールできます。 このユーティリティは、ライセンスデータベースと、システムに関連するすべてのファイルを削除し、データベースを再作成します。 その後、AppTrack ユーティリティが起動し、ライセンスの再インストールが要求されます。
破損したデータベースを回復するには、次の手順を行います。
sh $COBDIR/aslmf/aslmdbrecover
開発システムのライセンスデータベースが破損している場合は、同じようなユーティリティ lmfdbrecover を使用してデータベースを回復できます。 『開発ライセンスガイド』が利用できる場合は、『ライセンス管理機能の管理』の章の『破損したデータベースのリカバリ』を参照してください。
次のコマンドを入力した場合、
$COBDIR/aslmf/apptrack
次のメッセージが表示され、
/aslmf/apptrack not found
他の処理が行われない場合があります。この場合、正しいユーザとしてログインするだけでは AppTrack を実行するための環境設定はできません。
アプリケーションの Application Server がインストールされている場所を設定し、オペレーティングシステムに従って必要な環境変数を設定する必要があります。
Application Server がインストールされているディレクトリがわからない場合は、次のコマンドを使用してシステムを走査し、ライセンス管理ユーティリティが格納されているすべてのディレクトリを検索できます。
find / -name apptrack -print
このコマンドの出力に、いくつかのディレクトリにアクセスできなかったことが表示される場合がありますが、それらは無視してください。このコマンドの出力に、次の 1 行が含まれています。
cobol-installation-directory/aslmf/apptrack
また、次のような行も表示されます。
/usr/lib/cobol/aslmf/apptrack
この場合は、Application Server はディレクトリ /usr/lib/cobol/aslmf にインストールされています。
find コマンドの出力に、apptrack という文字を含むディレクトリが表示されなかった場合は、使用しているシステムに Application Server がインストールされていません。
find コマンドの出力に、apptrack という文字を含むディレクトリが複数表示された場合は、そのうちの 1 つだけが使用しているアプリケーションに対応しています。その他のディレクトリは、システムにインストールされ、他のユーザが使用しているアプリケーションに対応しています。各 AppTrack のインストール日付を調べて、どれが自分のものであるかを確認するために、表示された各ディレクトリに対して次のコマンドを実行します。
ls -l cobol-installation-directory/aslmf/apptrack
確信が持てない場合は、他のユーザが使用している AS ディレクトリをシステム管理者に確認してください。他のユーザは、AppTrack のコピーを実行し、オプション 2 ( ライセンスの概要) を選択することで、どれが自分の AS ディレクトリであるか確認できます。
自分のアプリケーションに対応する AS ディレクトリを確認したら、今後の使用のためにディレクトリ名をメモし、このセクションの最初に戻って AppTrack を起動します。
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