今こそ求められる外部環境変化に強いシステム
モダナイゼーションこそ安全で迅速なDX手段
何のためにDXを行うのか。それは連続する外部環境変化に適応し、事業の競争力を強化するためである。―基幹システムもまたその対象であり、対応の緊急性はより高まっている―10月6日(木)、マイクロフォーカス合同会社は「バーチャル モダナイゼーションフォーラム2022」を開催。「いま成すべきDXとモダナイゼーション最新動向」と題し、基調講演、3つのセッションから成る構成で、ビジネス環境、外部環境の変化が著しい現代において、リスクに強くビジネス力を高めるためのDXの最新処方箋を披露した。
Micro Focus President APJ,
Stephen McNulty
基調講演には、IDC Japan株式会社 グループバイスプレジデント、チーフリサーチアナリスト寄藤 幸治氏が登壇した。
同氏はまず問いかけた。何のために私たちはDXを行っているのか。コロナ禍もあって世の中のデジタル化は加速しており、統計データからもDX関連支出の伸びやデジタル活用に対する意欲の高さが見てとれるという。しかし、日本企業は世界に比べてDX成果を享受している割合が低く、ここ数年労働生産性が伸びていないこともまた事実だ。戦略よりもっと深いレベル、ミッション、パーパスという次元での連携ができていないからではないかと、寄藤氏は自説を展開した。
「IDCは、外部環境に適応すること、それこそがDXと考えます。そうしなければならない理由は、破壊的な環境変化が連続して起こり続けているから。ニューノーマルという言葉をウィズコロナと同義で考えているとしたら、それはまちがいです。ニューノーマルとは、変化が起こり続け、それが常態となることです。次々と起こる破壊的な環境変化に適応するために、私たちはDXを行うのです。」
デジタルレジリエンシー獲得には、2つのポイントがあるという。1つめは、すべての行動の起点を顧客や市場といった外部に置くこと、もう1つは、データドリブンであること。データを客観的に見て正しい意思決定を下していくことが重要で、ここでいうデータは、基幹システムに蓄積されたデータと、新たなデジタル化によってもたらされたデータが二大要素になる。そのため、基幹システムにおいてもモダナイゼーションのようなプラットフォーム整備を行うことによって、現場力が高まり、レジリエンシーも向上していく。「破壊的な環境変化の中で勝者になるためには、DXの目的を外部環境適応という点で再考すべきで、そこではデータ活用が必須です。社内に蓄積されたデータをフル活用するには基幹システムのモダナイズも必要です。DXを何のために行うのか、今一度少しだけ立ち止まって考えてみることをお勧めします」(寄藤氏)
図1 デジタルレジリエンシーの獲得には、
プラットフォーム整備も重要
Session1に登場したのは、マイクロフォーカス合同会社 コンサルタント 小林純一だ。今日、企業情報システム環境は複雑化の一途をたどり、そこに様々な外部のリスク要因が寄せてきている。そしてそれらが迅速な変化を困難にしている、と小林は語る。DXは今や時間をかけてもいられないという状況だ。では、どういう手法でどう変革するのか。競争優位性維持に貢献しているアプリケーションの変革には慎重な判断をしなければならない。正しく投資をし、将来にわたって保護される戦略を選択することが重要だ。それはビジネスの中核として価値を生み出しているCOBOL資産にもいえることで、これを活かすためにあるのがモダナイゼーションだ。ここでいう「モダナイゼーション」とは、既存のアプリケーション、データ、スキルなどの価値を保護しつつ、ビジネス要件に適した変革を実現するというものである。
マイクロフォーカスのモダナイゼーション実績は、1,000社以上の契約顧客、30年以上に及ぶモダナイゼーションプロジェクトサポートなど数字の上でも裏打ちされている。特に、IBMメインフレームについては、この上で動くCOBOL、 PL/Iワークロードをそのままクラウド上へ移行させた数多くの実績を誇っている。過去12年に経験したプロジェクト件数は594に上る。当初は小規模な移行で移行先もオンプレミスが中心だったが、最近はどんどん大型化し、クラウドシフトも増えている。
図2 マイクロフォーカステクノロジーによる
クラウド活用の3ステージ
図3 外部環境変化に強いシステムが
持つべき特性
図4 リホストから始まる
クラウド運用
このセッションでは、モダナイゼーションに成功した国内外の事例が紹介された。まずは、マイクロフォーカス製品を採用した国内事例だ。たとえば、ある金融関連企業では4社の異なるメインフレームを統合し、Linuxサーバーへの移行を成功させた。同じく金融業界では、SOMPOシステムズが業務支援システムをパブリッククラウド環境へアップリフト、COBOLアプリケーションをクラウド上で利用している。そのほかにもPL/Ⅰ資産をそのままオープン環境へリホストした製造業での事例、地方自治体向けシステムにリソース管理自動化プロセスを導入した公共分野での事例など、さまざまなケースが取り上げられた。
続いては、ソリューションプロバイダーであるキヤノンITソリューションズ株式会社が手がけた金融系A社の大規模マイグレーション事例だ。登壇者である戸村 浩明氏によると、A社では、IBM メインフレームに 多種多様なシステムが22個存在。システムごとに特性が異なり、使用されるプログラミング言語やサードパーティ製品も多種多様という状況だった。プログラミング言語は6種類利用されていたが、新システムへはリホスト・リライトによりMicro Focus COBOL、Micro Focus PL/Ⅰに移行された。Micro Focus Enterprise Serverの広いカバー範囲と高い互換性、また豊富な導入実績によって蓄積した知見によってプライベートクラウド環境への移行は順調に推移した。マイグレーションの結果、先進的な他システムとの融合が容易となり、新たな付加価値創生につながったという。
図5 A社事例から見るマイグレーション成功ポイント
最後の登壇者は、アマゾンウェブサービス合同会社の清水 大紀氏だ。同社には、すでにマイクロフォーカス製品を活用したAWS移行事例がいくつも存在する。その1つ、オーストラリアとニュージーランドで300店舗を展開する小売業B社では、25年以上前から基幹システムをメインフレーム上で実行していた。しかし、500MIPS、34個のアプリケーション、19,000個のコンポーネント、4,000個のジョブ、約900個の画面、1.4TBのデータを持つアプリケーションのクラウドネイティブ化を計画。マイクロフォーカス製品を使ってAWS上に移行した。これにより、年間の維持費を50%以上削減した。
図6 AWS上でMicro Focus製品を
使う価値
【基調講演】
今、改めて考えるDXの要件
~テクノロジー導入を変革に結び付ける
【Session 1】
DX推進の道筋とモダナイゼーション最新動向
【Session 2】
外部環境変化を見越したモダナイゼーション
【Session 3】
基幹システム移行の最新動向