来たる未来、企業競争力を左右するのはデータ資産
クラウドでもCOBOLを自在に活用できる環境構築を支援
SaaSが主流になり、何よりアジリティが重視される今日だからこそ、COBOLアプリケーションはクラウド移行し有効活用するのがふさわしい―11月16日(木)、マイクロフォーカス合同会社は「モダナイゼーションフォーラム2023」を開催。「モダナイゼーション最新動向とユーザー事例」と題し、Special Sessionを始めとする6つのセッションから成る構成で、数々の価値あるレガシーシステムを、最新のCOBOLテクノロジーでクラウドを始めとするオープン環境へと導いていることを報告した。
プログラム開始に先だって、マイクロフォーカス合同会社 職務執行者 田島 裕史が開会の挨拶に立った。田島はまず、4年ぶりにライブイベントを開催でき、多数の来場者を迎えられたことに対して謝辞を述べ、次のように語った。
「コロナ禍といえども、私どものCOBOLビジネスに大きな変化はありませんでした。むしろ順調に業績は推移しております。弊社は今年で創業39年を迎えます。これからもマイクロフォーカスはCOBOLビジネスを継続してまいりますので、今後とも我々のCOBOLソリューションをご検討、ご使用いただければと願っております。」
なぜクラウド化を進めるのか。今日、企業はその理由を十分理解するようになった。今はこれをどのように進めるのかに焦点が当たっている。その道筋は2030年を見据えたときにビジネスがどう変化するのかを想像すれば見えてくる。この先6年は過去10年を上回る変化が訪れると予想でき、私たちはその転換点に立っているのだ。
今後、これからの新しい未来を描いて導いていくことが求められている。企業のあり方自体が抜本的に変化することが予想される。自社が持っているあらゆるデータが生き残っていくための資産として重要視されるようになる。また、働き方や企業責任に対する考え方も変わり、経営層はサステナビリティや気候変動にも敏感になる必要があり、そういった報告にも今まで以上にITの力を活用しなければならない。そして、AIだ。2030年にはAIがメインストリームになる時代となっているだろう。
図1 2030年を見据えたビジネスの変化
では、これらの変化にモダナイゼーションやCOBOLアプリケーションはどのように関係するのか。長年活用してきたCOBOLアプリケーションやそのデータが、これらの変化の土台を支える役割を担う。あらゆる企業がソフトウェア・カンパニーに変化する中、情報の優位性こそが競争力をもたらす触媒となるが、情報の優位性を支えるのがデータだからだ。
「クラウド移行というモダナイゼーションは、競争優位を勝ち取るための重要なステップです。マイクロフォーカスでは「モダナイゼーション成熟度モデル」を開発、成功裏にクラウド移行するためのロードマップをステップ化しています。それだけでなく、x86ベースの汎用インフラへの移行、確実な移行計画の作成といった形で具体的にクラウド移行チェックリストを作成、顧客企業が踏み出す最初の一歩を支援しています」(McGill)
続くTechnical Sessionに、マイクロフォーカス合同会社 COBOL 事業部 技術部 朝日 宣文が登壇した。
COBOL基幹システムのDXを推進する上で、最も検討されている施策は今やクラウドだ。コスト削減効果に加え、クラウドが提供するサービスを利用することで新たな技術を容易に導入できる。作業場所を問わないシステム開発・運用も実現できる。それではどのように基幹システムを移行するか。朝日は訴えた。
「手法としてはまず、システムを一から作り直すリビルドがあります。新たな開発言語を採用できる利点はありますが、時間がかかるため、リビルドを計画した時点と完了した時点ではビジネスを取り巻く環境が変わってしまっているかもしれません。一方、リライトは現行システムをツールで別の言語に変換する再構築する手法です。しかし、それらの開発言語は果たしてシステム特性に見合うものなのでしょうか。これらに比べてモダナイゼーションは、既存資産を活用し、必要な機能を新たに開発する手法です。既存資産を活用することで比較的短期間での対応が可能で、小規模なゴール設定により変化に対応しやすく、新しい環境・技術の導入も可能という点で大きな優位性があります」
図2 マイクロフォーカスの
モダナイゼーション製品群
朝日はその後、書籍情報管理システムを題材に、AWS上でインスタンス無しの完全サーバーレス環境として稼働するCOBOLアプリケーションが、書籍のコメント情報を記載した外部サービスと連携させ、付加価値の高いシステムへとステップアップする様子を実際にデモンストレーションで見せた。そして、変化の激しい時代、クラウド移行とモダナイゼーションの組み合わせが基幹システム移行の最適解だと訴求した。
朝日と入れ替わって、エンタープライズ製品担当のマイクロフォーカス合同会社 COBOL 事業部 技術部 高橋 桂子が登壇した。エンタープライズ製品は、COBOLのみならずPL/Ⅰもサポート。またIBMメインフレームのJCL、CICS、IMSをオープン環境でも稼働させることができる製品だ。これらで構成されるアプリケーションは重要なビジネスロジックを担うことが多く、処理が長く停止するとビジネスに多大な影響を与えるため、エンタープライズ製品では一貫して可用性の確保に注力している。たとえば、スケールアウト パフォーマンス/可用性クラスター(PAC)構成を取ると、処理を実行させる複数のEnterprise Serverインスタンスを異なるマシンに配置して単一障害点を最小限にできる。
「PAC構成を適用することで、いずれかのインスタンスが何らかの原因で停止しても、他のインスタンスにより処理を続行することができ、実行処理の可用性を確保することができます。システム全体の高可用性を高めるためには関連するハードやソフトウェアの可用性も考慮する必要がありますが、オープン環境では、さまざまなツールを自由に選択しながらシステムの高可用性を実現することができます」(高橋)。
高橋はまた、最新バージョン 9.0の新機能ハイライトとして、COBOL言語の拡張によりJavaとCOBOLの相互運用性が向上したこと、IBM PL/Ⅰとの互換性も強化されたことなどを紹介した。
ここからは、実際にモダナイゼーションに成功した実例が報告された。YKK AP様のミッションクリティカルな大規模システムのリホスト事例では、まずYKK AP 株式会社 IT統括部 ジャパンITアプリケーションアーキテクト マネージャ 金子 一幸氏がプロジェクトの全体像を紹介した。「窓」をはじめとした建築用プロダクツやリフォームソリューションを提供するYKK AP では、販売管理システム、工事台帳管理システムを対象にリホストプロジェクトを立ち上げることになった。JESとCICSが19リージョン、COBOLが8,800本、JCLが21,000本、BMS画面定義650本、アセンブラ30本、移行対象のデータベースとファイルは合わせて約44,000と、非常に膨大な資産規模だった。2018年にキックオフ、2020年にシステムテストを開始したが、コロナ禍に見舞われ、フルリモート環境での対応を余儀なくされた。2022年8月にサービスインし、すでにメインフレームは撤去されている。
「プロジェクトの成功ポイントは、品質を担保するために3つのステップから成る徹底したシステムテストを実施したことです。それとともに十分にパフォーマンス検証を行ったことで、本番切り替えに臨めました」(金子氏)
「まず、メインフレームと互換性の高いMicro Focus™ Enterprise Serverへ移行したこと、アプリケーション資産はツール移行を徹底し、品質を確保して効率的にテスト推進、プログラム凍結期間を撤廃したこと、データについてもツール移行を徹底し、人の介在を最小限にとどめて品質を確保に努めたこと、テストや移行の効率化を図ったこと、連携先サーバは修正を行わない移行に徹し、移行リスクを排除したこと、十分なテストを行い、データ特性による不具合も排除したことです。また、マイグレーションによる付加価値として、プログラムの保守性向上をめざし、これを実現しました」(白井氏)
図3 YKK AP様リホストプロジェクト
成功のポイント
図4 日本製紙様におけるマイグレーション方式
「MMSによるプログラム資産移行とAJTOOLなどの代替ミドルウェアにより、基本的な機能に問題はありませんでした。マイグレーションでは照合テストのシナリオとデータ作成が重要ですが、日本製紙様では、システム統合時のテスト手順やテストシナリオを再利用して、効率よく進められました。日本製紙様にも成功の秘訣を伺ったところ、テストなどをベンダに丸投げしなかったこと、ユーザー部門が協力的であったことはとても重要であったとコメントをいただきました」(比毛氏)
図5 アコム様リノベーションプロジェクトの概略
このうち画面制御ロジックのストレート・コンバージョンを担っているDXCテクノロジー・ジャパン株式会社 Analytics & Engineering DX & Migration Manager 関 正浩氏が登壇し、事例を紹介した。メインフレーム資産連携が求められるCOBOLプログラムは3,123本、COBOLコピーファイルは7,824本ある。ここでメインフレームCOBOLからJVM COBOLへの変換を行った暫定チャネル/暫定アプリや、JVM COBOLからJava呼出しを可能にするRブリッジプログラムなどは自動生成ツールを用いて作成しているが、自動生成ツールへの組込みに採用したのがMicro Focus™ Visual COBOLだった。
「Micro Focus™ COBOLは、アコム様のリノベーションプロジェクトの一端を担っています。Javaクラス生成によりJavaライブラリともリンク可能ですし、最新のフレームワークが利用できます。また、現行資産の流用も可能で、移行変換方法も確立、自動生成プログラムを採用していることもあり、開発工数の削減や安定した品質の担保に寄与しています。さらにマイクロフォーカスからの技術サポート協力で、課題/問題に対する影響度の把握やリリース調整ができており、結果としてスケジュール遅延リスクの低減も実現しています。これらにより、開発生産がスピードアップし、スケジュール/課題に対する柔軟な対応が可能になるという成果がもたらされています」(関氏)
【Special Session】
モダナイゼーションビジネスと戦略
【Technical Session】
基幹システムのクラウドモダナイゼーションと可用性の確保
【Customer Success Session】
YKK AP様におけるリホスト事例
日本製紙様におけるリホスト事例
アコム様におけるモダナイゼーション事例