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日本製紙株式会社

富士通メインフレームからのストレートマイグレーション
オープン環境のプログラム言語として日本製紙はRocket® Visual COBOLを選択

紙・パルプ事業を基盤とした多角的な展開を進める総合バイオマス企業である日本製紙株式会社では、洋紙と板紙の受注・生産・販売・在庫を管理する、COBOL ベースの業務システムを開発・運用しています。富士通メインフレーム上で稼働していましたが、サードパーティ製ツールの保守終了が明らかになったのを機に、オープン環境へのストレートマイグレーションを決断しました。

ここで言語として選ばれたのが、ロケットソフトウェアの Rocket® Visual COBOL。その選定理由は、安心して大規模な基幹業務システムを稼働させられる高い製品品質と、世界的に豊富な導入実績でした。2021 年、新システムは当初のスケジュールどおり本稼働を果たし、バッチ処理時間や運用保守コストの大幅な削減など、多大な成果を生み出しました。

The Overview

日本製紙株式会社は、再生可能な木材資源を最大限に活かし、紙・パルプ事業を基盤とした多角的な展開を進める総合バイオマス企業です。グループのビジネスモデルは、「持続可能な森林資源の循環」、「技術力で多種多様に利用する木質資源の循環」、「積極的な製品リサイクル」という3つの柱から構成されています。印刷・情報用紙をはじめとする各種紙製品の製造に加え、家庭紙やパッケージ、機能性化成品、さらにはセルロースナノファイバーなど次世代素材の開発にも注力。近年はエネルギー、農業、建材といった分野にも積極的に取り組み、環境調和と持続可能な社会の実現に貢献しています。国内外に広がる拠点と高い技術力を背景に、紙を超えた価値創出をめざし、事業の革新を進めています。

The Challenge

同社には、洋紙と板紙の受注・生産・販売・在庫を管理する、COBOLベースの業務システムがあります。洋紙を取り扱う「PRIME」、板紙を取り扱う「PRIME2」というその二つのシステムは、長年にわたって富士通メインフレーム上で稼働してきました。このシステムは社内で利用されるだけでなく、販売代理店、物流事業者など、社外からもアクセスされ、別システムともデータ連携している、まさに同社にとって基幹業務システムでした。

あるとき、このインフラ上で動作するサードパーティ製の印刷制御やシステム処理実行管理ツールなどに関して、メーカー側から保守終了が通知されました。それらのツールは安定して動いてはいたものの、保守終了はひとたび何か障害が発生すると対応不能になることを意味します。基幹業務システムだけに、情報システム部としてそうした不安材料をそのままにしておくことはできません。

また、メインフレームの運用保守費用が高止まりしているという現実があり、以前より同社でも課題となっていました。そのため、これを機にPRIMEおよびPRIME 2をオープン環境へ移行しようと決断しました。

The Solution

そして、プロジェクトチームを立ち上げ、移行方式を検討し始めました。システムとしては完成度が高かったため、今回はストレートマイグレーションを選択することにしました。社内外に多くのエンドユーザーが存在するシステムでもあり、移行前後で運用上の違いを極力感じさせないことも重要な要件でした。その前提で複数のベンダーに見積りを依頼したところ、ほとんどが予想以上に高額な費用であったといいます。新機能の追加がないストレートマイグレーションで、稟議を通す上でも過剰な投資はできないと考えていた中で現れたのが、東京システムハウス(以下、TSH)のMMS(メインフレーム・マイグレーション・サービス)でした。TSHの提案は、豊富な移行実績を有しており、特に製紙業界で成功事例がある点が大きな安心材料となりました。また、コスト面において非常に競争力があったことも背中を押しました。 そこで、システムの一部を対象に、パイロット検証を実施することにしました。選んだのはPRIMEの中でも最も複雑な処理を搭載している出庫系機能(依頼・確定系)で、このシステムで移行可能なら、他のシステムでも移せると見込みが立てられたからです。

実際に構築してみると、思いのほかスムーズに移行可能でした。ここで言語として採用されたのが、Rocket® Visual COBOLです。日本製紙株式会社 管理本部 情報システム部 調査役 吉田 剛氏は、選定理由を次のように語ります。

「基幹業務システムですから、プロジェクトチームで安全に移行しようと話し合っていました。PRIMEは、オンライン処理、バッチ処理とともにCOBOLが使われており、プログラム本数にして3千本以上と規模が大きいため、安定して動かすことのできる製品が第一の選択肢になります。Rocket® Visual COBOLはオープン環境で利用されるCOBOL言語として品質が高く、世界的に実績があります。TSHでもRocket® Visual COBOLを使った移行実績が豊富で、『お勧めします』という言葉もあったので、この製品を選ぶことにしました」

吉田 剛氏

日本製紙株式会社
管理本部 情報システム部
調査役
吉田 剛

The Result

同社はマイグレーションに入る前に、PRIME とPRIME 2のシステム統合を行いました。これには移行資産の削減と二重管理を解消するという二つの目的がありました。改修やテストのたびに両方に対応が必要となる非効率な状況を解消するため、この機会に一本化することにしたのです。とはいえ、PRIMEとPRIME 2の間には大きな違いがあったため、統合の範囲には限界がありましたが、全体の約2割を整理・統合できました。これは後のマイグレーション作業の効率化に向けた大きな一歩となり、特に、このとき作成したテストシナリオが、マイグレーションでのテストプロセスで大いに役立つことになります。

満を持してマイグレーションに進んだのは、2018年の半ばでした。あらためて要件定義を行い、資産調査とプロトタイプ開発を踏まえて移行方針を立てた結果、障害対応を除いてひとまず資産を凍結し、オープン環境でも変わらず利用できるものはそのまま利用、それ以外についてはMMSのサービスを活用し、移行を実施することにします。たとえば、COBOLについては、ツールによる資産移行、JCLやオンラインの仕組みなど、メインフレーム特有の機能にはAJTOOLを活用、それでも不足する機能については新規に代替機能を開発するという具合でした。途中、コロナ禍にも見舞われましたが、プロジェクトでクラウドサービスやWeb会議を活用することによって、スケジュールに遅延が生じることはありませんでした。前述のテストシナリオの存在もあってテストプロセスも順調に進み、2021年10月、当初の予定どおり本稼働の日を迎えました。
立ち上がり当初、新システムはオンライン処理とオンラインバッチ処理で性能問題が発生しましたが、前者はDBの接続方式を、後者についてはジョブの実行順序を見直すことで無事解決しました。
オープン環境への移行を果たしたことで、同社では大きな効果が現れています。

一つは、バッチ処理の実行時間が画期的に速くなったことです。日次処理に関しては、メインフレームで2時間10分かかっていたものがオープン環境では1時間10分になり、月次処理は、メインフレームで4時間かかっていたものがオープン環境で1時間55分になりました。吉田氏は語ります。「これまで、処理スピードはそれでもメインフレームの方が速いだろうと思っていましたが、あまりにも速く、精度も高いので驚きました。これによって格段に楽になったのが、我々の障害対応です。メインフレーム時代、一番締めの遅いバッチ処理は深夜0時を超え、エラーが発生すると寝ていても電話連絡が入って、朝のオンライン起動までに何とか解決するよう対応策を指示しなければなりませんでした。現在は遅くとも夜10時までに処理が終わり、何か起こっても余裕を持って対処できるようになっています」
もう一つは、コスト削減です。PRIMEが移行を果たしたことでメインフレームを撤去することができ、運用保守コストは大幅に削減できました。
日本製紙株式会社 管理本部 情報システム部 主席調査役 西原 仁氏は、ストレートマイグレーションの成果について次のように語ります。

「無事に移行できたことを喜んでいます。システム移行は簡単なプロジェクトではなく、他社では移行後に停止を余儀なくされるぐらいシステムが“暴れた”ケースも見聞きしています。そういうことが起きなかったのは、COBOLのままストレートマイグレーションを選択したことが大きかったと思います。本稼働後にメーカーが正式にメインフレームからの撤退を発表しましたが、早く行動を起こして本当に正解だったと思いました」

西原 仁氏

日本製紙株式会社
管理本部 情報システム部
主席調査
西原 仁

今後、直近ではサーバリプレースが予定されており、そこでは現在25台あるサーバが10数台に削減されます。また、画面についてもよりWebブラウザライクに利用できるようアップデートすることや、クラウドサービスへの移行も構想されています。
「私はCOBOLから他の言語に変えたいとは思いません。3千本以上のプログラムを書き換えるのは現実的ではありません。PRIMEを使い続ける限り、このままCOBOLで行きたいと思います」
西原氏はPRIMEでのCOBOL利用をこう語ります。
「マイグレーションはそのプロセスも重要ながら、移ったあとにどうしたいかというビジョンも重要です。これから検討されるなら、先にしっかり見極めておくことをお勧めします」
とは吉田氏。先見の明で富士通メインフレームからのストレートマイグレーションを、一足も二足も早く成功させ、大きな果実を得た日本製紙。同社がオープン環境での言語に選んだのは、Rocket® Visual COBOLでした。

富士通メインフレーム上のCOBOL資産をRocket® Visual COBOLでオープン化

マイグレーション方式(環境1)
マイグレーション方式(環境2)

Technical Keyword

The Challenge
・富士通メインフレームからの移行
・運用保守コストの削減要望

The Solution
・言語として世界的に実績があり安定感の高いRocket® Visual COBOL を選択

The Results
・当初のスケジュールどおり本稼働を開始
・バッチ処理の実行時間が半減
・上記に伴い、夜間の障害対応負荷が大きく削減
・メインフレーム撤去で運用保守コストがほぼ半減

ユーザープロフィール

日本製紙株式会社

本 社

東京都千代田区

資 本 金

1,048億7300万円

従 業 員 数

単体 4,938名、連結 15,557名(2024年 3月31日現在)

事 業 内 容

紙・パルプ事業、生活関連事業、エネルギー事業、木材・建材・土木建設関連事業、アグリ(農業)事業、セルロースナノファイバー(CNF)事業、レジャー・物流・その他事業

ユーザー事例(PDF版)

日本製紙株式会社(1.0MB)