COBOL業務ロジックを維持・活用しながら時代に合わせた新機能を提供
新たなDevOpsの仕組みが納期遵守やシステムの安定稼働に大きく貢献
みずほフィナンシャルグループのシンクタンク みずほ情報総研株式会社では、1980年代から地方自治体向けシステムの開発・運用を担っています。2003年にはメインフレームからのマイグレーションプロジェクトがスタート。第2期のシステムではオープン環境への移行とともに、先進的なCOBOL-Java 連携システムによるWeb アプリケーション化を成功させました。2015年、システム再構築プロジェクトが立ち上がり、ここでも同社はCOBOL-Java連携を維持。統合開発環境Micro Focus Visual COBOLを活用して、2019年1月、第3期システムを本番稼働に導きました。今回はまた、マイクロフォーカスからの総合テストにおけるリソース管理プロセスの自動化提案を採用。この新たなDevOpsの仕組みが納期遵守やシステムの安定稼働に大きく貢献しました。
みずほ情報総研株式会社は、みずほフィナンシャルグループのIT戦略会社です。社会保障、健康・医療、環境・エネルギー、情報通信・科学技術、金融、企業経営など多岐にわたる分野で、コンサルティングの高い専門性と先端ITの融合により新たな価値を生み出し、お客さまと社会の課題を解決します。同社は、先端技術を活用したビジネス創出やオープンイノベーションの実現など、お客さまのデジタルイノベーションの推進をサポートします。内外の「知」を広く集め、新たな価値として提供する「知の循環」を通じて、お客さま自身が気づいていない潜在的なニーズ・課題をも掘り起こし、お客さまの持続的な発展とよりよい未来の創造実現をめざしています。
同社の開発したシステムの一つに、地方自治体向けシステムがあります。1980年代半ばにIBMメインフレーム環境でCOBOLプログラムとして本稼働を開始し、以降、頻繁な制度改正にも迅速に対応しながら、長年にわたり同社が開発・運用を担ってきました。
2000 年代に入り、地方自治体内で組織統合があり、類似システムの統合、オープン環境への移行とWebアプリケーション化が計画されました。このとき、大きな方針として打ち出されたのがCOBOL-Java連携でした。画面制御などはJava プログラムへ移行するものの、業務ロジックはこれまでのCOBOL資産を生かすというものでした。まだ日本国内ではこのような連携事例は数少なく、まさに黎明期といえる時期でした。しかし、同社はひるまずこの枠組みで進めることを決断します。その理由は、重要なのは蓄積したノウハウの活用に適したモデルだったからです。メインフレーム時代から開発に携わったエンジニアは当該業務を熟知しており、再構築にあたりプログラム品質を維持するためには、既存のCOBOL資産を活用するのが一番でした。そして同社は、COBOL開発環境としてMicro Focus Net Expressを採用します。その理由を、みずほ情報総研株式会社 エンタープライズ第5部 リードITエンジニア 野口仁氏は次のように語ります。
「当時、オープン系のCOBOL 開発環境で、Javaとの連携性をはっきり打ち出していたのはマイクロフォーカスだけでした。COBOL-Java連携に関するホワイトペーパーも出しており、Java側のアプリケーションサーバーに関する情報にもしっかりコミットしていた。その検証結果は信頼するに足るものでした。また、当時マイクロフォーカス環境で簡易的にCOBOL とJavaを連携させた事例があり、話を聞きに行くことができました。そんな中JCA というオープンな規格にNet Expressが対応し、JCA連携の検証作業を通じマイクロフォーカス社と強いコネクション が確立できたため、開発方針を決定しプロジェクトを進めていきました」
こうして同社は、主要OSをLinuxとする、先進的なCOBOL-Java連携Webアプリケーションへの移行を成功させ、第2 期のシステムは本稼働を果たしました。
再び時は流れて2015年。システムに採用したハードウェア、ソフトウェアの保守期限終了を見据え、第3期となるシステム再構築プロジェクトが立ち上がります。ここでも業務ロジックはCOBOLという大方針は変わらず、COBOL-Java連携が維持されることになりました。この決定について野口氏は以下のように語ります。
「制度改正は頻繁に発生するものの、データを格納して、計算を行い、結果を出力するという基本的なシステム要件は変わりません。特にこのシステムはバッチ処理が多く、データをプログラムにかけてファイルに出力し、またそれをプログラムにかけてファイルに出力というプロセスを繰り返します。こうした処理形態にはCOBOLが適しており、業務知識が必要となるチェックロジックはCOBOLを継承。従来からの開発者が効率良く作業を進められ、当社のマイグレーションの課題に対してはマイクロフォーカス社のサポートを得ることができ、アーキテクチャの継続利用も可能になりました」
今回、同社が採用した統合開発環境はMicro Focus Visual COBOLです。野口氏は、この開発ツールがCOBOL IDEとしてEclipseを利用しJava開発と統一感を保てることや、操作性の高いCOBOLエディターを評価しています。第3期のシステムは、インフラOSがWindowsに統一され、一部のデータに関しては電子帳票、CSVファイルでの提供が実現されました。その他、特定の条件で大量データを即時還元する日中バッチ処理も対応可能になりました。
第3期のシステム再構築プロジェクトでは、最終盤に、総合テストにおけるリソース管理プロセスを自動化する「引継管理システム」が開発されました。これは、開発したプログラムを、品質を担保した状態でビルドし、ステージングサーバーに格納するまでのプロセスを自動化するもので、効率的なDevOpsの仕組みを実装しています。上図が引継管理処理の流れですが、この元になる原案を提示したのは、実はマイクロフォーカスでした。それを同社がプロジェクトチーム体制に合わせ、このように体系化しました。
このシステムは大きく、ライブラリサーバー、構成管理サーバー、自動引継環境という3つのサーバー群から構成されています。ライブラリサーバーに搭載されているのは、ソースコード管理を行うApache Subversion、構成管理サーバーには、継続的インテグレーションツールJenkinsとプロジェクト管理ソフトウェアRedmineです。そして自動引継環境には、Micro Focus Visual COBOL、アプリケーション資産の可視化を支援するMicro Focus Enterprise Analyzerが搭載されています。
このシステム開発を担ったみずほ情報総研株式会社 エンタープライズ第5部 山本清生氏は、当時を以下のように振り返ります。
「総合テストプロセスが目前に迫っており、開発期間が限られた中での作業でした。マイクロフォーカスが作成したマニュアルはよく整備されていたのですが、発生したトラブルについてはメールで支援を仰ぎました。数度のやりとりでJavaの実行環境に問題があると見抜き、解決策も提示してくれました。このサポートのおかげで無事にビルド処理の自動化を実現できました」
野口氏は山本氏を補足してこう語ります。
「第2期プロジェクトのときは、リソース管理のトラブルで、総合テストに大きな手戻りが生じました。プログラムの確認やデータの復元に苦労した記憶が残っていて、第3 期では確固とした対策を講じなければと考えていました。第2期プロジェクトから時間が経ち、いろいろシステムインフラ技術も変化していた中で、引継管理を自動化しようというマイクロフォーカスからの提案、そしてサポートはとてもありがたいものでした。このシステムのおかげでプログラム配備のトラブルは生じることなく、ビルド/ デプロイは順調に進行。納期遵守に大きな貢献を果たしました」
第3期システムは2019年1月に無事カットオーバーし、安定稼働を続けています。今後はEnterprise Analyzerに蓄積された解析結果を分析し、開発担当者へのフィードバックや開発標準確立など利活用を進めていきたい、と野口氏。同システムは、今後も頻繁な制度改正に迅速に対応しながら進化し続けます。
プログラム関連のトラブル最少化、総合テストプロセスのスムーズな進行
時代に合わせた新機能を提供
本 社
東京都千代田区
設 立
2004年10月1日
資 本 金
16億2,750万円
従 業 員 数
4,541人(2019年3月31日現在)
事 業 内 容
コンサルティング、システムインテグレーション、アウトソーシング