54,000の代理店に利用されるミッションクリティカルな業務支援システム
クラウド移行のシステム基盤にMicro Focus Visual COBOLを採用
SOMPOホールディングスの戦略的IT企業であるSOMPOシステムズ株式会社は、代理店支援システム 『SJ-NET』の開発・運用を担っています。『SJ-NET』は、SOMPOグループで進行中である基幹システムの全面刷新を目的とした「未来革新プロジェクト」への移行を視野にいれつつ一定期間稼働し続ける必要があるため、コスト削減や、柔軟性及び開発スピードの向上、さらに新たな価値の創出が求められていました。この命題に出した回答がクラウド移行です。メインフレームのCOBOLプログラムを再利用するこのシステムで、今回もマイクロフォーカスのCOBOL製品が最適であると判断されました。これにより、試算どおりのコスト削減が実現する目途が立っており、その先も見据えたDXへの道に乗り出しています。
SOMPOシステムズ株式会社は、日本の最大手損害保険企業の一社 SOMPOホールディングスの戦略的IT企業です。グループ全体のビジネスをICT技術で進化させる役割を担っています。SOMPOグループでは「安心・安全・健康のテーマパーク」をグループのブランドスローガンに、より多くの顧客の「安心・安全・健康」に資する最高品質のサービスを提供し、社会に貢献することを経営理念としています。
それを受けて同社は、グループが展開する6つの事業分野、国内損害保険事業、国内生命保険事業、介護・シニア事業、海外保険事業、デジタル事業、ヘルスケア事業のすべてにおいて、先進のICT・デジタル技術を基軸に、顧客およびグループ各社を強力に支援しています。
同社が開発・運用を担うシステムの一つに、『SJ-NET』(旧 SJNK-NET)があります。これは、同社の保険を取り扱う代理店向けの業務支援システムです。顧客契約管理や保険料収納管理といった管理機能、顧客との商談のために利用されるコンサルティング、保険設計、リスク分析といった営業支援機能、スケジュール管理、ToDo管理などの社内コミュニケーション機能など、多彩なメニューで構成されています。2020年4月時点で、展開されている代理店数は約54,000。さまざまなユーザーの利用チャネルに対応しながら、24時間365日サービスで提供されています。これはまた、最初のリリースを2002年にさかのぼる息の長いシステムでもあります。法改正対応などに起因する大規模なプログラム改修、ソフトウェア/ハードウェア アップデートを繰り返しつつ、今日まで利用されて続けてきました(図1)。
一方、SOMPOグループでは現在、未来革新プロジェクトと呼ばれる基幹システムの全面刷新プロジェクトが進行しています。ここでは、業務プロセスから抜本的に見直していくという意欲的なコンセプトが立てられました。また、開発される新システムでは一つひとつが互いに影響を与え合わないよう、最適なサイズでサービスや機能が構成され、それを組み合わせて利用する疎結合化も行われます。こうしたサービスや機能は、『SJ-NET』からも抽出されます。未来革新プロジェクトの目的は、新しい商品やビジネスのための価値創造に繋げていくこと。新商品開発期間の短縮や、迅速かつ柔軟にいろいろなサービス連携を実現するといった、新たな世界を目指しています。
こうした背景から、現行システムである『SJ-NET』には、新規投資への原資を確保するためにもコスト削減が要請されていました。また、未来革新プロジェクトのコンセプトに足並みを合わせる上で、運用自動化や事業環境変化に即応できる柔軟性やスピードの獲得、そして何より、新たな価値の創出を可能にするテクノロジー適用も求められたのです。
この命題に、SOMPOシステムズが出した答えはクラウド移行でした。2019年のことです。SOMPOシステムズ株式会社 ITサービス本部 部長 進藤誠氏は決断の理由を次のように語ります。
「クラウドへのリフト&シフトはITの世界的な潮流であり、システム更改時にクラウドを優先して検討するというクラウドファーストは、当時の中期経営計画にも言及されていたグループ方針でした。また、コスト抑制効果が高く、要望どおりのコスト削減が期待できることがわかりました。さらに、あれこれ準備する必要がないため、その時間が節約できるというのも大きなメリットでした」
このクラウド移行で採用されたシステム基盤は、マイクロフォーカスのCOBOL製品Micro Focus Visual COBOLです。2002年のリリースでMicro Focus Net Expressを採用して以来、『SJ-NET』のアップデートに合わせて、マイクロフォーカスのCOBOL製品もアップデートしています。それというのも、SOMPOグループでは、メインフレーム上のCOBOLプログラムをオープンシステムでも共用するシステム方針があるからです。メインフレームで開発された保険料算出ロジックや規定チェックロジックは、Windows環境に合わせCOM+ コンポーネントとしてプログラム部品化され、『SJ-NET』で利用されます。この環境にマイクロフォーカス製品が最適と判断し続けられた結果でした(図2)。
SOMPOシステムズ株式会社 ITサービス本部 サーバー実行基盤グループ シニアシステムエンジニア 小路智広氏は、こう語ります。
「『SJ-NET』上の保険設計に関わるプログラム資産は、メインフレームのプログラム資産と共用利用しており、メインフレームで稼働実績のある信頼性の高いビジネスロジック群を『SJ-NET』の様なオープンシステムで再利用する際にも、プログラムに手を入れる必要がありません。
開発言語やOSの老朽化を理由としたプログラム改修に必要なコストは、ビジネスの理解も共感も得られにくい現実があります。一度作ったプログラムを長期間稼働させることは、当たり前のように思われるかもしれませんが、実はシステムのトータルコストやライフサイクルを考えるうえでとても重要な観点です。モダンな言語で上記の要件を満たしているものは存在しないのが現実です。
弊社では、今回のクラウド移行に起因したプログラム改修は極力行わないという方針をかかげ、システム改修コストを抑え、かつ性能劣化や品質低下など不測の事態を回避することで、54,000の代理店への影響を極限まで減らす事を優先しました。今回の移行における第一の目的は、品質も性能もそのままクラウドへリフトアップすることにありました。
このシステムでリリース当初からマイクロフォーカスのCOBOL製品を利用しているのは、メインフレームで稼働しているCOBOLと高い互換性を誇り、Visual COBOLのバージョンアップが行われる中でも高い後方互換性を維持し続けている点を評価しているからです。 また、Micro Focus Visual COBOLは様々な言語のインターフェイスと互換性があり、昨今ではRESTインターフェイスやFaaS・コンテナ技術にも対応しており、将来的にシステムのクラウドネイティブ化をめざす際にも役立ってくれると考えました」
『SJ-NET』開発・運用チームにとってCOBOLとは、と問うと、小路氏はこう回答しました。
「損害保険における保険料試算や、試算に必要なチェック処理等を行う、重要なキーテクノロジーの位置づけです。保険商品の中には、5~10年単位で契約を維持し続けるものもあります。お客様の既存商品の異動を行う為に、長期間システムを維持し続ける必要があるということです。言語仕様がシンプルであるが故にCOBOLプログラムがこの先も変わりなく動くという確かな信頼性とアドバンテージがあります。
今後、基幹システムの脱メインフレーム化を検討していく中で、スケーラブルにクラウドでCOBOLプログラムを動かせる環境が整い始めた今、盲目的に別言語へマイグレーションする以外にCOBOLプログラムを利用し続けるという選択肢は当然視野に入れるべきと考えます。
COBOLのシンプルな言語仕様や、全世界でもあまりに多く使われているという実情から、商用サポートが停止されるリスクも低いと言えます。時代やアーキテクチャの変化に合わせて適切なソリューションをお客様に提案していく中で、バッチ処理の様な単純な業務処理を無理にJavaに置き換えるリスクを冒すよりも、実装要件がマッチするのであれば、適材適所の観点でCOBOLを使うと言う選択肢を排除する理由は少なくなっていると考えています」
現在、一部のシステムは移行が完了し、本番稼働を始めています。本格的な移行は2022年度4月以降順次行われ、同年度中にはすべて完了する予定です。
試算したコスト削減は予定どおり達成できる見込みがすでに立っています。そして、同社はすでにその先を見据えています。進藤氏は次のように展望を語ります。
「最初のゴールは、クラウド移行を確実に行い、そこで安定稼働を得ること。それが最も重要です。移行によるコスト削減という観点では計画どおり推移しており、現在、移行プロセスを検討しつつ性能検証を入念に行いながらプロジェクトを進めています。
ただ、現段階でのクラウド移行は仮想化基盤と同じで、今後はクラウド利用のメリットを追求する必要があります。技術研究の一環でCOBOL部品をFaaSで稼働させるPoCを実施しました。一定のメリット・デメリットが見えてきている中で、COBOL部品を単独でサービス化する事にビジネス的な価値を見出す事が出来れば、実装する価値は高いと見ています。
サーバーレス技術によるスケーラブルな稼働環境の提供や、疎結合化。これらもコスト削減や新たな価値の創出といったニーズに貢献できる施策で、今後本格的に検討していきます」
マイクロフォーカスは、「Bridging Now and Next」をタグラインに、既存テクノロジーと最新テクノロジーの橋渡しの支援をミッションとしています。今回、まさにMicro Focus Visual COBOLをブリッジ役として、SOMPOシステムズは未来への道を歩み始めています。
COBOLプログラムがシステム部品として利用されている代理店支援システムのクラウド移行
日経クロステック主催「ITモダナイゼーションSummit 2022」にてSOMPOシステムズ様にユーザー事例を発表いただきました。 マイクロフォーカスよりDXに向けた各種アプローチの比較、モダナイゼーション成熟度モデルを基に何が実現できるのかを、続いて、SOMPOシステムズ様よりCOBOLシステムをクラウド環境で利用する事例を紹介いただきました。
※こちらは日経クロステック主催「ITモダナイゼーションSummit 2022」にて配信されたセッション動画です。
COBOL資産の”これから”とDX対応へのアプローチ
~SOMPOシステムズ様におけるクラウド環境でのCOBOLシステム利用事例のご紹介~
マイクロフォーカス合同会社 COBOL事業部 技術部
SOMPOシステムズ株式会社 ITサービス本部 サーバー実行基盤サービスグループ シニアシステムエンジニア 小路 智広 様
本 社
東京都立川市
資 本 金
7,000万円
従 業 員 数
1,658名(男性:1,093名 女性:565名/2021年4月現在)
事 業 内 容
コンピュータおよび関連機器による情報処理サービスの受託業務
ソフトウェアの開発受託および販売業務 等