アウトソーシングセンターの統合を機にメインフレームのオープン化を決断
ベンダーに依存しないMicro FocusのCOBOL製品を選んで、マイグレーションを実施
1966年の創業以来、トータルITサービスを提供してきた株式会社横浜電算では、地方自治体関連団体の業務システムを長年にわたって開発・運用しています。2012年、アウトソーシングセンターの統合を機に、メインフレームシステムをオープン化し同社のオフィスに設置・運用することを決め、既存のCOBOLプログラム資産を活かして移行できるマイグレーションを選択することにしました。
プロジェクト遂行に当たって、同社はまずシステムベンダーに依存しないMicro Focus Visual COBOLを選択。また、マイグレーションサービスを提供する東京システムハウスをパートナーに選び、プロジェクトを推進しました。
その結果、新システムは期限内に移行を完了。その後も安定稼働を続けています。バッチプログラムは約30%処理速度が向上しました。同社では今後、他のプロジェクトへもマイグレーション手法適用を構想しています。
株式会社横浜電算は、1966年の創業以来、最良の技術・ノウハウを駆使して価値あるサービスを創出・提供してきた情報サービス企業です。顧客の業務内容を分析し、課題を解決するために情報システムの企画・構築・運用をトータルサービスとしてカバー。具体的には、システムの企画・立案からプログラムの開発、必要なハードウェア・ソフトウェアの選定・導入、完成したシステムの保守・管理までを総合的に行います。同社のシステムインテグレーションサービスは、顧客IT環境のライフサイクルマネジメントをサポートしています。2016年2月で50周年。常に「顧客目線に立ったサービス」をモットーに、蓄積した専門知識、最新技術で、ITサービスを提供し、これを通して社会に貢献できることを最高の喜びとしています。
横浜電算は、地方自治体関連団体の業務システムを長年にわたって開発・運用しています。これは富士通メインフレーム上にCOBOLで開発されたもので、メインフレームはベンダーのホスティング環境を利用したアウトソーシングセンターに設置していました。
ところが2012年、時代の流れからこのホスティング会社より2014年9月末でメインフレーム運用を終了したいとの申し入れがあり、このメインフレームの稼働システムを移行させる必要が生じました。そのため、同社では次期ホスティング検討委員会を立ち上げ、対策を検討し始めます。移行先拠点の候補は三つありました。一つは顧客のオフィス、一つはサードパーティーのデータセンター、一つは横浜電算のオフィスです。コストや日常の運用を考えると、現実的なのは自社のオフィスでした。しかし、現在のオフィスは、メインフレームの設置を想定し設計した建屋ではないため、そのまま稼働システムを移行する事は不可能であり、そこで浮上したのはメインフレームからオープン環境へのマイグレーションでした。最新のIAサーバーならコンパクトにラックに収まり、同社のサーバー室を使って運用可能です。
そして、現行COBOLアプリケーション資産を移すにあたり、リホストするか、リライトするか、リビルドするか。全部で6業務あるプログラムを精査した結果、COBOLアプリケーションの多い4業務をリホスト、残りの2業務をリビルドすることにしました。
株式会社横浜電算 事業推進本部 アウトソーシングサービス部 システム課長 山本茂氏は、こう語ります。
「メインフレーム運用終了の期限が迫る中、リホストによりCOBOL資産をそのまま活用することで、プロジェクトの期間を短縮できると考えました。また、新規開発によるプログラムの品質低下を回避したかったのもあります。マイグレーション後も業務を熟知している同じ技術者が運用保守を行うので、その意味でもCOBOL資産有効活用が現実解でした」
メインフレームからのマイグレーションは、同社としては初めての経験でしたが、この機会にマイグレーションノウハウのスキルを獲得しようという意図もありました。また、今回のプロジェクトを契機に運用保守コストの軽減も目指すことになりました。
同社はまず、移行先のWindows環境でのCOBOL製品をMicro Focus Visual COBOLと決定します。その理由は“中立性”でした。「避けたかったのは、ベンダーロックインでした。ベンダーに依存した製品の選択は、その後のシステム選定に何かと制約を受けそうで懸念がありました。その点、Micro Focus Visual COBOLはCOBOL専業ベンダーの製品で、さまざまなシステムインフラ上で動きます。事実上の業界標準でもあり、何にも拘束されないというオープンさを評価しました」と山本氏は語ります。
そして、このMicro Focus Visual COBOL利用を前提に、マイグレーションサービスを提供してくれるパートナーをどこにするか。ここでのパートナー選択のポイントは、“マイグレーションの手法を具体的に提示しながら、一緒にプロジェクトを推進してくれること”。その基準に合致したのが、東京システムハウス株式会社(以下、TSH)でした。
株式会社横浜電算 事業推進本部 アウトソーシングサービス部 システム課 担当課長 高橋勝氏は、次のように語ります。
「複数のシステムインテグレーターから提案をいただきましたが、プログラム変換については、“こちらからメインフレームのCOBOLソースを提出して、先方が変換完了したプログラムを納品する”という提案が大勢を占めていました。しかし、私たちはプログラム変換そのものの経験を希望していて、ブラックボックスになるのは嫌でした。そうした中、TSHは“COBOLプログラム変換は横浜電算担当で、画面やJCL変換などはTSH担当で”と水平分業による協業を提案してくれました。また、TSHにはAJTOOL for Micro Focusというマイグレーション後の環境を構成しやすいツールも完備されていて、その意味でも頼れると思いました」
今回、マイグレーションに先立って、同社は念入りな資産の棚卸しを行いました。オンラインプログラムは1,400本を1,100本に、バッチプログラムは6,000本を1,700本に。プロジェクトそのものを余裕あるものとするために、2013年に入った直後から半年かけて業務を熟知した技術者が手作業でふるいにかけていったといいます。
2013年6月、プロジェクトキックオフ。3ヶ月の分析・設計フェーズを経て、変換フェーズに入ります。ここではTSHが変換指示書を出し、横浜電算プロジェクトチームはそれを受けて変換ツールを作成、変換の結果を見ながらツールに修正を加え、徐々に変換の精度を向上させていったといいます。一部、オンラインプログラムでメインフレーム環境に依存した特殊な記述は手修正が必要だったものの、バッチプログラムは90%以上の変換率を達成、このフェーズも3ヶ月で終了しました。
続く新旧マッチングテストでは、データベース変更に起因するテスト結果の不一致が発生したのですが、マイグレーション経験が豊富なTSHのサポートで、すぐに修正できました。今回、業務に精通した横浜電算の技術者が主体的にマイグレーションを行い、TSHがマイグレーション全般の品質と性能改善に責任を持つ、という分業は非常にうまくいったとのことです。
新業務システムは2014年9月に本稼働を開始、メインフレーム運用終了前に無事マイグレーション作業は完了しました。その後もシステムは順調に安定稼働しており、まったく支障なく顧客のビジネスを支えています。
さらに、これは期待していた以上の効果だったそうですが、バッチプログラムは約30%処理速度が向上し、運用の現場に余裕が生まれています。人材という観点でも、これまでメインフレームシステムを運用保守していた技術者チームが、そのままオープンシステムへスライド。これを機に新しい運用管理システムを導入したため、運用フロー自体は変わったものの、混乱はなかったそうです。
今回の経験を高橋氏はこう振り返ります。「今回のマイグレーションは、TSHの支援もあり、期間内に終える事ができました。オープン化により新しい技術をどんどん融合していくことで、お客様へのサービス向上にも繋げていきます」
同社では今後、開発・運用を手がける他のメインフレームシステムに関しても、この手法の適用を考えていきたいとのことです。
メインフレームからWindows環境へのマイグレーション
AIMからJBoss EAP/SQL Serverへ
本 社
神奈川県横浜市西区
設 立
1966年2月
資 本 金
9,900万円
従 業 員 数
82名
事 業 内 容
システムインテグレーション、データバックアップサービス