Micro Focus Enterprise Serverの活用でIBMメインフレームからのリホストを実現
移行後トラブル一つなく安定稼働、事業会社への課金は従来の1/3に
国内の主要な建材・設備機器メーカー5社が統合して誕生した株式会社LIXILでは、情報システムの統一とホスト脱却のプロジェクトを推進しています。最初にマイグレーション対象となったのはIBMメインフレームで稼働する事業会社の基幹業務システムでした。既存資産をできる限り継続利用して確実にオープン環境へリホストすることを目的としMicro Focus Enterprise Serverを採用。この製品を熟知したキヤノンITソリューションズの豊富なマイグレーション経験によってプロジェクトは着実に進み、新システムは品質・コスト・納期目標を満たして予定どおり本番稼働、今日までトラブル一つなく動いています。このリホストにより事業会社への課金は1/3に削減されました。
LIXILは、世界中の誰もが願う豊かで快適な住まいを実現するために、日々の暮らしの課題を解決する先進的なトイレ、お風呂、キッチンなどの水まわり製品と窓、ドア、インテリア、エクステリアなどの建材製品を開発、提供しています。ものづくりの伝統を礎に、INAX、GROHE、American Standard、TOSTEMをはじめとする数々の製品ブランドを通して、世界をリードする技術やイノベーションで、人びとのより良い暮らしに貢献しています。現在70,000人超の従業員を擁し、世界150カ国以上で事業を展開するLIXILは、生活者の視点に立った製品を提供することで、毎日世界で10億人以上の人びとの暮らしを支えています。
株式会社LIXILは大手5社の統合により誕生したため、当初は複数メーカーのメインフレームが稼働するなど情報システムは複雑な環境にありました。そこで、LIXILとして情報システムを統一するL-Oneプロジェクトが立ち上がります。全システムを精査し、1、競争力強化を期して全面刷新するシステム 2、この機会にパッケージやクラウド利用に置き換えるシステム 3、この先も現行機能を維持するシステム、の3種類に分類。ハードウェアはメインフレームからの脱却を図ることになりました。
IBMメインフレームで稼働する、ある事業会社の基幹業務システムは、3に決定しました。このシステムは、すでに主たるオンライン処理プログラムがオープン環境に切り出されていたものの、それらからデータを参照されるバッチ処理中心のハブ的システムとして存在していました。プログラム本数は、RSP-COBOL約3,500本、サードベンダー製特殊ユーティリティによるプログラム約11,000本、JCL約4,000本、帳票約60本、画面約130本。RSP-COBOLは、属人性を排したCOBOLプログラミングが行えるように配慮された独自の簡易言語でした。
すべての周辺システムの中核として稼働しているこのシステムをどのようにオープン環境へマイグレーションするか。同社はリプレース、リライト、リホストの3つの方向で検討を進めた結果、ハードウェアを入れ換えるだけの「リプレース」や、品質の低下リスクがありコスト・納期の観点からも予測を立てにくい「リライト」を選択肢から外します。“現行機能を維持することが主目的のマイグレーションであるため、成功指標はユーザーに移行を気づかれないこと。そのためにはプログラム品質が一番重要で、安定的に動くことが絶対。メインフレームよりパフォーマンスが落ちたり、不具合が増えたというようなことがあってはならない” 情報システム本部はそう判断し「リホスト」を選択したのです。
2014年、同社情報システム本部は、具体的なリホスト手法の調査を開始しました。そこで浮上したのがIBMメインフレーム互換のJES/CICS/IMS実行機能を搭載したMicro Focus Enterprise Serverの利用でした。また、これを使ったソリューションを提供するシステムインテグレーターとして、キヤノンITソリューションズ(以下、キヤノンITS)の存在を知りコンタクトします。そして、投げかける課題に対して期待以上の提案をしてくれるキヤノンITSの姿勢に信頼感を得たといいます。
株式会社LIXIL 情報システム本部 事業会社システム部 部長 藤崎雅基氏は次のように語ります。「Micro Focus Enterprise Serverは既存アプリケーション資産に手を加えることなく再利用できるリホストツールと知り、手作業によるリスクを排除でき、効率よくマイグレーションすることが可能だと思いました。また、キヤノンITSが製品を熟知していることから、これでいこうと決定しました。別のリホストツールを利用する提案も他社から出ていましたが、IMSに対応しておらずSQLへの書き換えが必要になることが難点でした。検討当時、Micro Focus Enterprise ServerはIMS移行の国内事例は少なかったのですが、グローバルでの導入実績が豊富とのことで安心していました」
プロジェクトのキックオフは2015年1月。当初、藤崎氏はすべてをツールでストレートコンバージョンするのは難しいだろうと思っていました。RSP-COBOLとサードベンダー製特殊ユーティリティで開発された大量のプログラムがあったからです。双方とも書き換えの手作業が発生すると覚悟していましたが、RSP-COBOLについては、これをMicro Focus COBOLに変換するプリコンパイラを Windowsに移植することをキヤノンITSが提案しました。また、サードベンダー製特殊ユーティリティについてはOpen版製品へ移行することで、こちらも書き換えることなく動きました。つまり、結果的にすべての資産が手作業なく移行可能だったのです。キヤノンITSは、DBMSやJCLなども含めメインフレーム上のほとんどの資産を移行するための高精度な変換ツールを次々に提供しました。キヤノンITSの“熟練”ソリューションが本プロジェクトに大きく貢献したといいます。
同年4月と6月には、移行の確かさを実証するPOC(Proof of Concept)を実施。本番相当の20多重のIMSバッチを実行し、さまざまなチューニングの結果、ホストより高速な実行が可能であることも検証できました。ここで藤崎氏はプロジェクトの成功を確信したそうです。その後、本格的な移行作業を開始し、2016年11月、「M-VISION」と名づけられた新システムは、当初の予定どおり本番稼働を果たしました。そして、現在に至るまでトラブル一つなく安定稼働を続けています。
Micro Focus Enterprise Serverを利用し、メインフレーム上で稼働しているシステムをオープン環境へリホスト。現行のプログラム・データに極力手を加えず、ストレートコンバージョンを実施。
想定したとおり、パフォーマンスも向上しました。株式会社LIXIL 情報システム本部 事業会社システム部 移行統合グループ 主査 田岸永吉氏は「すべての周辺システムと連動しているため、今回の移行で全処理が速くなったわけではないですが、バッチの総処理時間は半分以下になりました」と語ります。
今回のプロジェクトについて藤崎氏は以下のように評価しました。「手を加えることなく全資産をそのまま移せたことで、品質・コスト・納期目標の達成に大きく貢献しました。また、結果的にRSP-COBOLが使い続けられることになり、保守効率も維持できています。システムの安定性も大きいですね。本番稼働からトラブルゼロですよ、トラブルゼロ。これはすごい」
株式会社LIXIL 情報システム本部 事業会社システム部 流通システムグループ グループリーダー 佐藤正信氏は、藤崎氏を補足して次のように語ります。「このシステムの直接的なユーザーは約50名。Windowsを利用するため、まったく移行に気づいていないというと嘘になりますが、ユーザー研修を行っていないにも関わらず、生産性の低下は起こっていません。また、メインフレーム脱却を果たしたので、この事業会社への課金は1/3になりました」
同社では他にもメインフレーム移行プロジェクトが進んでおり、ここでもMicro Focus Enterprise Serverをベースとしたリホストソリューションが有力な選択候補となっています。
IBMメインフレーム脱却と既存資産の再利用
Micro Focus Enterprise Serverを利用したリホスト
本 社
東京都千代田区
本 店
東京都江東区
設 立
2001年10月1日
資 本 金
346億円
売 上 高
8,699億3,500万円(2017年3月期)
従 業 員 数
14,527名(2017年3月末現在)
事 業 内 容
建材・設備機器の製造およびその関連サービス業
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