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QCDをすべて満たして完遂したメインフレーム・リホスト・プロジェクト
システム処理スピード、システム可用性の大幅な向上を実現

王子製紙等を中核事業会社とする王子グループのIT戦略と実行を担う王子ビジネスセンター株式会社では、2014年、システムのコスト削減を図るためIBMメインフレームの廃止を決定しました。リホスト・マイグレーションを選択し、MicroFocusエンタープライズ製品を採用。第1次マイグレーションは2016年8月に完了し、9月には第2次マイグレーションがスタートしました。綿密な移行計画により、2018年1月に予定通り本番稼働を果たし、メインフレームを撤去しました。

目標としたシステムコスト削減の実現のみならず、投資コストは約1年で回収可能の見込となり、生じた原資で念願のシステム二重化も果たしています。また、システム処理スピードが大幅に向上、エンドユーザー業務のスピードアップや保守工数の大幅削減も実現しました。

The Overview

日本の紙製造におけるパイオニア企業王子製紙。創業は1873年で実に145年に亘って製紙関連事業に携わってきました。2012年、同社は純粋持ち株会社制度へ移行、王子ホールディングスとなり、5つのカンパニーと独立事業会社群により幅広くビジネスを展開しています。海外への進出にも意欲的で、現在では売上高の3割強を海外事業が占めています。このグループのIT戦略と実行を担っているのがシェアードサービス会社である王子ビジネスセンター株式会社で、2001年、王子製紙の情報システム部門が分社独立して誕生しました。

今日、コンピューター技術が大きく進歩し、その資源をいかに有効活用するかが重要なテーマとなっています。そうした中、王子ビジネスセンターでは、長年培ってきた業務経験と最新の技術を組み合わせ、人とコンピューターの能力を100%引き出す、安全で安定したシステム作りを目指しています。

The Challenge

2014年、同社は主要事業会社の工場システムや営業系システムといった基幹システムを動かすIBMメインフレームを廃止し、システムのコストダウンを図ることを決定しました。プログラム規模はCOBOLで11,400本、約1,705万ステップ、JCLで7,400本、約140万ステップ、VSAM700ファイル、DB2のテーブル数は1,360に上ります。

当初はJavaによるリライト・マイグレーションを構想しました。しかし、プログラム・メンテナンスが困難になるとしてリホスト・マイグレーションへ変更。ソリューションの中核にはコストパフォーマンスが高いと判断したマイクロフォーカスのエンタープライズ製品(EnterpriseDeveloper / EnterpriseServer)を選び、システムインテグレーターの手を借りずに自力でLinuxサーバーへマイグレーションすることにしました。規模が大きいことからフェーズを2つに分け、2015年7月より第1次マイグレーションが本格的にスタート。2016年8月には、プログラム本数2,900本、508万ステップ、180人月ワークロードのプロジェクトが無事完了して安定稼働を果たしました。その後、間髪を置かずプロジェクトチームは第2次マイグレーションの資産移行準備に入ります。2016年9月のことでした。

The solution

第2次マイグレーションのプログラム規模は、プログラム本数8,500本、1,197万ステップとこちらの方が大規模であったため、前プロジェクトの3倍に当たる6か月間を資産移行の時間に充て、テストを含む並行稼働には13か月間をかけました。プロジェクトはすべて予定どおり推移し、2018年1月、新システムは本番稼働を開始。その月末には早くもメインフレームを撤去しました。

王子ビジネスセンター株式会社 代表取締役社長 緒方真一路氏は、スケジュールどおりプロジェクトが完了したいくつかの理由を以下のように語ります。

「1つは、COBOL、JCL、BMSなどの資産に関して移行ツールを作成、それによって自動変換を進めたことです。これは手作業を最少化するためで、プログラム資産の8~9割を自動変換しました。また、ツールもバージョンアップを数度繰り返して変換精度の向上に努めました。

もう1つ大きかったのは、並行計算結果を担保するために、システム機能の変更や追加を一切行わないストレート・コンバージョンに徹したことです。極端なことを言えば、バグもそのまま連れていくことにしました。

その一方で、“断捨離”、つまりゴミは捨てる方針を立て、移行するかどうかを迷う資産は対象としませんでした。それにより今回300万ステップ分を処分できました」

テスト工程における精度向上および効率化取り組みも重要な要因でした。全プログラム、JCLの並行計算テストを数回実施したほか、バッチレポートの読み合わせやデータの突き合わせは、購入あるいは自社で作成したツールを利用して機械的に実施したといいます。また、すべてのテストを現行システムの保守担当者が実施したため、テスト手順書の作成負荷が軽減でき、精度高くテストを実行できました。EDIなど外部インタフェースを利用するプログラムは、全データを使って実際に相手先と通信テストを実行したそうです。全部で相手先は100社以上存在しましたが、相手先で必要になる変更確認もすべてこの段階で事前に行ったのです。

そのほかの理由として、メインフレーム時代のやり方にこだわらず、オープン環境の特性に合わせ、データの並び順の違いなどインフラ環境の相違による変化を受け入れたことを同氏は挙げました。

マイグレーションの概要

マイグレーションの概要

The result

第2次マイグレーションが完了した2018年1月から現在まで、新システムに関するトラブルはLinuxサーバーBIOS設定に起因するハードウェア故障で1回、それも1時間停止したのみでほぼ順調に稼働を続けています。Micro Focus Enterprise Serverに関連しては、致命的ではない障害が不定期なタイミングで発生していましたが、マイクロフォーカスの協力を得て直ちに対策および回避策を実施、ビジネスに影響を及ぼすには至っていません。

緒方氏は今回のマイグレーションプロジェクトで達成した成果を複数挙げています。

「まずはメインフレームを廃止し、コストを削減できたことです。そして、当初はマイグレーション・コストを3年で回収する予定でしたが、約1年で回収できる見込みが立ちました。この原因としてテスト工程に当社の保守担当者を充てられたことが大きく、計662人月の工数のうちテスト工程290人月は社内で人員調達が可能でした。

また、システム処理スピードが大幅に向上し、エンドユーザー業務がスピードアップしました。オンライン処理レスポンスはメインフレーム比で1/2以下に、バッチ処理レスポンスは同1/3以下に短縮し、締め処理遅延が解消しています。

このシステム処理スピードの向上は、テスト時間の短縮、システム変更時の立ち会い作業時間の短縮などの保守工数の大幅削減も実現し、保守担当者の業務改革につながっています」

さらに、オープン化によるハードウェアコスト削減で原資を得たため、従来は見送っていたシステムの二重化が実現。基幹システムの可用性が大きく向上しました。

加えて、プログラム資産はメインフレームと同様のCOBOL、JCLで、保守担当者が従来どおり保守すればよいため、新システム本番稼働後に要員の増員やスキル変更は生じていません。

基幹システムの核心といえるプログラム資産を生かしつつ、王子ビジネスセンターはMicro Focus エンタープライズ製品の活用で、QCD三拍子そろったマイグレーションを見事成功させました。

プロジェクトの全体スケジュール

プロジェクトの全体スケジュール

Technical Keyword

IBMメインフレーム廃止によるコスト削減
Micro Focus エンタープライズ製品を利用したリホスト・マイグレーション

ユーザープロフィール

王子ホールディングス株式会社

本 社

東京都中央区

創 業

1873年2月12日

資 本 金

1,038億8,000万円(2018年3月末現在)

従 業 員 数

36,144名(2018年3月末現在)

グループ会社

子会社297社・関連会社73社

事 業 内 容

「産業資材」「生活消費財」「機能材」「印刷情報メディア」「資源環境ビジネス」の5つのカンパニーと独立事業会社群

王子ビジネスセンター株式会社

本 社

東京都中央区

創 業

2001年5月30日

資 本 金

5,000万円

従 業 員 数

60名、協力会社約70名(2018年8月現在)

事 業 内 容

王子グループに関する下記の業務
・IT企画、システム資産管理
・インフラの構築・運用保守
・システムの開発・運用保守